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新設医学部が医学教育に与える影響 [お茶の水だより]

No.4820 (2016年09月10日発行) P.13

登録日: 2016-10-13

最終更新日: 2016-10-19

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▶松野博一文部科学大臣が8月31日、国際医療福祉大が申請していた千葉県成田市の特区での医学部新設を正式に認可した。今週号の「まとめてみました」欄では、新設医学部の概要を紹介した。
▶国際医療福祉大は「既存の医学部とは次元の異なる教育を目指す」として、国際性を重視した医学教育の提供を掲げている。同時に、専任教員25名を配しカリキュラム編成や評価などを行う「医学教育統括センター」を設ける点にも注目したい。同大のカリキュラムの特徴は、90週に及ぶ診療参加型臨床実習や、卒業時に身につけるべき能力に主眼を置く「学習成果基盤型教育」、器官別統合講義、教養教育は医用工学といった医師として必要な学問に特化─など。いずれも国際的な医学教育の評価組織である「日本医学教育評価機構」の評価基準に沿った内容だ。日本の医学教育を変革する可能性を秘めていることは間違いない。
▶一方、いくつか気になる点もある。1年生から英語の授業を行うとしているが、日本語でも難解な医学の講義が英語で成り立つのか。他の医学部でも問題になっている留年率の増加は起こらないか。文科省の審議会が留意事項で指摘したように、外国人留学生にはきちんとした支援が必要だ。何より、医師国家試験が臨床に必要な能力を問う設問に見直されなければ、特長である臨床実習や英語学習と国試の勉強との両立が難しくなる。
▶海外の臨床経験が豊富なある著名な医師は取材の際、国際医療福祉大の医学部新設について「日本に特徴的な風景だが、国際化といっても臨床現場が古色蒼然としたものでは、きちんとした教育は行えない」と述べた。「新しい革袋に新しい酒を盛れるか」は新設医学部の手腕に掛かっている。

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