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【識者の眼】「総合診療科の発展に必要不可欠な多様性」藤島清太郎

No.5145 (2022年12月03日発行) P.61

藤島清太郎 (慶應義塾大学医学部総合診療教育センター・センター長)

登録日: 2022-11-25

最終更新日: 2022-11-25

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総合診療科は、高齢化によるジェネラリストへのニーズの高まりを受け、新たに基本領域診療科として認められたわが国独自の診療科だ。総合診療専門研修プログラムでは、総合診療Ⅰ(クリニック・在宅診療)、総合診療Ⅱ(病院総合診療)に加え、内科1年、救急科・小児科各3カ月のローテーションが義務付けられている。私はこれまでに、一般内科、呼吸器内科、ER型救急・集中治療を経て現在は総合診療科に所属しているが、三重県内の病院の内科では小児診療も担ったので、概ねプログラムに則った研修を受けている。複数の科で様々な診療経験を積み重ねてきた結果、総合診療科の標榜する幅広い領域の患者診療に抵抗なく関われていることを実感しており、新専門研修プログラムを作成された先生方の慧眼には敬服している。

さて、これまでの診療経験からは、内科医、家庭医、総合診療医はもちろんのこと、救急医、集中治療医も、対象とする傷病の内訳・重症度や診療期間は各々異なるものの、いずれもジェネラリストだと思う。1990年初頭から長らく在籍した救急科は、当初各科出身者の寄り合い所帯であったが、社会のニーズに応え、より良い救急医療の提供を目標とし、一体感を持って切磋琢磨した結果、大きく発展し、現在ではわが国にフィットした専門領域として確立されている。振り返ってみるに、この発展過程において、『Rebel Ideas:The power of diverse thinking(多様性の科学)』(マシュー・サイド著)でも強調されている多様性が大きく貢献していた。

一方、総合診療領域においても様々な出身科の医師が活躍しているが、まだ十分な一体感を持てるまでには至っていない。総合診療科が今後順調な発展を遂げるためには、多様性を尊重し、総合的医療を志向する医師を広く取り込み、新たな領域を創るという共通の目的に向かって、より緊密に協力し合う必要がある。また教育においても、方法論に拘泥せず、幅広い領域の患者に対し質の高い標準的医療を提供できる医師の育成というアウトカム・ベースでの総合診療医学の構築が重要だと考える。

藤島清太郎(慶應義塾大学医学部総合診療教育センター・センター長)[総合診療医学]

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