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非アルコール性脂肪肝炎(NASH)[私の治療]

No.5144 (2022年11月26日発行) P.41

江口有一郎 (医療法人ロコメディカル ロコメディカル総合研究所所長)

登録日: 2022-11-24

最終更新日: 2022-11-21

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  • 非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis:NASH)は,肝の慢性炎症と線維化を伴い肝硬変や肝癌へ進展する。NASHを成因とした肝細胞癌(肝癌)が近年,増加している。
    また,メタボリックシンドロームや糖尿病,心筋梗塞,脳梗塞等の動脈硬化性疾患,肝癌以外の他臓器癌の併発も多く,肝機能検査や腹部超音波検査,腹部CT検査などの肝癌の定期的なサーベイランスに加え,動脈硬化性疾患や全身のスクリーニングも行いたい。

    ▶診断のポイント

    NASHの確定診断には肝生検が必須であるが,日常診療では腹部超音波検査などの肝硬度測定やFIB-4インデックス,NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)fibrosisスコアなどのスコアリングシステムを用いて,線維化の程度を推定し診断の参考とする。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    NASHの治療方針は,NAFLDと同様に内臓肥満があれば,食事・運動療法が前提であり,2020年に6年ぶりに改訂された「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020」では,食事・運動療法は7~10%の減量を目標とすることが明記された。十分な改善がない場合は,肝脂肪化や炎症,肝線維化の改善をめざし薬物療法を行う。また,高度肥満(BMI>35)を伴う場合は,肥満手術も選択される。日常診療での治療評価として3~6カ月の期間で,体重や血清ALT値,画像検査による肝脂肪化の評価や肝線維化の改善に関してフィブロスキャンなどの画像検査を用いる。

    【治療上の一般的な注意】

    いまだNASHに対する保険収載された薬剤はないため,併存する生活習慣病に薬物治療が必要な場合,その併存症への治療薬で,NASHの改善も期待される薬剤を用いる。現在,NASHに対して複数の国際臨床試験が実施されているが,しばらく時間を要する。

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