お知らせ
前立腺肥大症［私の治療］
前立腺肥大症は50歳以降の男性に好発し，肥大前立腺腫による尿道閉塞ならびに組織内平滑筋の過緊張による機能的閉塞がその病態をなす。代表的症状は尿勢低下，腹圧排尿などの排尿症状と排尿後尿滴下，残尿感などの排尿後症状に加えて，約半数で尿意切迫感，頻尿などの過活動膀胱症状を認める。
▶診断のポイント
症状を国際前立腺症状スコア（International Prostate Symptom Score：IPSS）により評価する。IPSSは重症度判定に加えて，治療効果の評価にも有用である。
客観的評価には超音波検査が有用である。前立腺を観察し（体積測定を含む），膀胱内突出の有無（一般に有の場合は閉塞度が高い）などを確認する。また，排尿後に膀胱に施行すれば，残尿測定となる。およその目安として，前立腺体積は30mL以上が有意な肥大，残尿は50～100mL以上が臨床上有意であり，泌尿器科へのコンサルトを考慮する。なお，類似の症状を呈する疾患（膀胱癌，前立腺癌，膀胱結石，間質性膀胱炎，細菌性膀胱炎など）を除外する。
尿検査，尿細胞診，血清前立腺特異抗原（PSA）検査などを必要に応じて行う。
▶私の治療方針・処方の組み立て方
初期治療は行動療法と薬物療法からなる。行動療法は生活指導（過剰な水分やカフェイン・アルコール摂取の制限）に加えて，過活動膀胱を併発している場合は，膀胱訓練（排尿を我慢して徐々に排尿間隔を延長させ膀胱容量を増加させる），骨盤底筋訓練（肛門挙筋や尿道・肛門括約筋を意図的に反復収縮する）を行う。2～3カ月で60～70％の症例が改善する。
薬物療法は，前立腺部尿道抵抗を減少させるα1遮断薬あるいはPDE-5阻害薬が第一選択薬である。また，体積が30mL以上の前立腺肥大症の場合は，5α還元酵素阻害薬を併用することで前立腺が縮小し，症状のさらなる改善と尿閉や手術のリスクが軽減し，長期治療成績が改善する。ただし，服用によりPSAが低下するので留意する。
【治療上の一般的注意】
急性尿閉や腎後性腎不全を伴う場合は，一時的に導尿，尿道カテーテル留置が必要になる。尿路感染のリスク軽減とQOLの観点から，間欠（自己）導尿を採用し，尿道カテーテル留置はできるだけ避ける。
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