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【識者の眼】「どの医師がチャイルド・デス・レビューに携わるか」沼口 敦

No.5136 (2022年10月01日発行) P.58

沼口 敦 (名古屋大学医学部附属病院救急・内科系集中治療部部長、病院講師)

登録日: 2022-09-06

最終更新日: 2022-09-06

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わが国の子ども(本稿では18歳未満を指す)の死亡診断に小児科の関与は大きい。2017〜20年に子どもの死亡診断がなされた施設は、小児専門病院12%、その他の小児科を標榜する病院73%等であった。また愛知県の2013〜18年の15歳未満死亡の84%が、小児科医によって死亡診断された。これらのことからも、小児科医がチャイルド・デス・レビュー(CDR)に重要な役割を果たすことが期待される。内因死であれば、診療の過程で画像を含む各種検査が行われ、また病理解剖も実施されれば、その結果も加味して死因究明がなされる。いかに詳細に問診、検査、診断や治療がなされたか、臨床医の知識と熱意が問われる。

ただし、CDRの重要な対象とされる外因死を抽出すると、小児科医による死亡診断は52%であった。また子どもの死亡における外因死の割合は、小児専門病院では4%、小児科を標榜する病院では病床数が多いほど小さい傾向にあり、700床以上の病院で13%、200床未満の病院で27%であった。病床を持たない医院では、取り扱った子どもの死の54%が外因であった。外因傷病の診療が小児科以外の診療科で行われることに加えて、主に外因死に対する死体検案業務が、小児科以外の医師によって一定程度行われることを反映していると考えられる。さらに、外因死や不詳の死であれば警察に異状死届出がなされ、必要であれば法医解剖によって医学的な死因究明が行われる。2017〜20年の子どもの外因死のうち20%(自殺を除くと34%)、不詳死の67%に剖検が行われた。小児科以外の多くの臨床診療科、病理学者、法医学者にとっても、子どもの死因究明への関与は大きい。

死因究明はCDRと同義ではないが、CDRの推進によって間接的に死因究明の推進にもつながる。そのためには、小児科医はもちろんのこと、日常的には子どもの医療に関わらない医療者にも、重要な役割が期待される。

*:ここでの不詳死とは、死亡診断書に記載される死亡の種類ではなく、死因傷病名等による独自分類の結果によるため、政府統計とは一部数値が異なる。

沼口 敦(名古屋大学医学部附属病院救急・内科系集中治療部部長、病院講師)[子どもの死亡③]

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