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持続勃起症[私の治療]

No.5129 (2022年08月13日発行) P.46

佐々木春明 (昭和大学藤が丘病院泌尿器科教授)

登録日: 2022-08-12

最終更新日: 2022-08-09

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  • 持続勃起症(priapism)は「性的刺激・性的興奮と無関係に勃起が4時間を超えて持続している状態」と定義され,①虚血性持続勃起症(以下,虚血性),②非虚血性持続勃起症(以下,非虚血性),③stuttering,に分類される。
    虚血性は,陰茎海綿体からの流出路が閉鎖するため,動脈血の陰茎海綿体への流入が停止し,急激に低酸素化とアシドーシスが進行する。低酸素状態が6時間以上持続すると海綿体組織に非可逆性の変化が生じ,その後,勃起障害が発生する。一方,非虚血性では陰茎海綿体内の動脈が破綻することにより動脈血が過剰に流入するが,流出路が確保されている状態なので,陰茎海綿体内の酸素飽和度は保たれ,虚血状態にはならない。
    非虚血性は経過観察が可能であるが,虚血性では4時間を超える場合は以下の処置が必要とされているので,虚血性か非虚血性かを鑑別することが大切である。
    stutteringは一過性で,多くは鎌状赤血球症など種々の血液疾患に関連するため,わが国ではきわめて少ない。

    ▶診断のポイント

    【原因】

    虚血性の原因として薬剤性,特に抗うつ薬・統合失調症薬が最も多く,次に慢性骨髄性白血病が多い。一方,非虚血性の多くは会陰部の打撲が先行する。

    【視診】

    虚血性では完全に硬直して完全勃起状態であり,疼痛を訴える。一方,非虚血性では不完全勃起の状態で,軟らかく,疼痛の訴えはない。

    【陰茎海綿体内血液ガス分析】

    最も重要な検査である。虚血性では静脈血に類似しており,pH<7.25,pO2<30mmHg,pCO2>60mmHgとなる。一方,非虚血性では動脈血に類似し,pH 7.4,pO2>90mmHg,pCO2<40mmHgとなる。

    【カラードプラ検査法】

    血液ガス分析についで重要な検査である。非虚血性では,陰茎海綿体内に動脈の損傷部位を確認できる。損傷部位では海綿体動脈が破綻しており,乱流として描出される。一方,動脈の血流がみられない場合は虚血性と診断し,緊急処置の準備を行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    非虚血性では経過観察を行う。一方,虚血性では直ちに救急処置および緊急手術の準備を行う。救急処置では適宜効果判定を行い,不十分であれば躊躇することなく次のステップに進むことが重要である。

    【ポイント】

    ①虚血性の場合は緊急処置が必要なので,非虚血性との鑑別が重要である。
    ②虚血性では侵襲の低い治療法から行い,効果が得られなければ躊躇せず次の方法に移行する。
    ③非虚血性は経過観察が第一選択である。

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