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硝子体出血[私の治療]

No.5126 (2022年07月23日発行) P.49

林 篤志 (富山大学学術研究部医学系眼科学講座教授)

登録日: 2022-07-21

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  • 硝子体出血は,網膜や脈絡膜などの血管の破綻により眼内に出血が貯留した状態を言う。原因疾患が様々であるため鑑別診断を行い,治療の時期を適切に判断する病態である。

    ▶診断のポイント

    【病歴を確認】

    ①硝子体出血の自覚症状には飛蚊視とそれに続く視野障害,視力低下がある。これらの自覚症状がいつから,どのような状況で発生したかを問診する。

    ②過去に同様の症状があったかどうか,また手術等の治療の既往歴について問診する。罹患眼でない眼の既往歴も問診する。

    ③基礎疾患として糖尿病,眼打撲等外的要因の有無を問診する。

    【視力,眼圧,眼底の透見性を確認】

    ①視力は,硝子体出血の程度に応じた低下を示しているかの判断に重要である。

    ②硝子体出血を生じると眼圧が上昇することがあり注意が必要である。血管新生緑内障を発症後に硝子体出血を生じることもある。また,眼圧が7mmHg以下の場合は,眼球裂傷の可能性があるため至急,裂傷の有無を精査する必要がある。

    ③硝子体出血を生じると眼底の透見性が低下するが,出血量の判断と視力との相関を考える上で,眼底の透見性を確認することは必須である。

    【光干渉断層計(OCT)と超音波Bモードを確認】

    ①OCTはある程度の硝子体出血があっても撮像可能であることが多い。黄斑部の状態を確認するために必ず実施する。

    ②眼底の透見性が低下した場合に,眼球内の精査および網膜剝離の有無を確認するために,超音波Bモード検査は必須である。超音波検査では,硝子体出血により硝子体が凝血により高反射となり,血液が硝子体腔内で移動する様子も確認できる。特に硝子体剝離と網膜剝離の鑑別は,視神経乳頭との付着をみながら眼球を上下左右に動かして超音波検査を行うことで,多くの場合は可能である。

    【反対眼の状態を確認】

    糖尿病などの基礎疾患による網膜症などで硝子体出血を生じている場合は,罹患眼でない反対眼にも相応の眼底変化が生じていると考えられる。反対眼の視力と眼圧検査および散瞳後の眼底検査,OCT検査等は必ず一緒に行うべきである。

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