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難治性乳び胸に対する最近の治療法【オクトレオチドが有用で,軽快しない場合は,胸管結紮術,胸腔・腹腔シャントを行う】

No.4823 (2016年10月01日発行) P.58

中田昌男 (川崎医科大学呼吸器外科教授)

登録日: 2016-10-04

最終更新日: 2016-10-06

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開胸術後の合併症のひとつに乳び胸がある。乳び胸には,先天性,外傷性,腫瘍に伴う二次性のものも存在する。長期間にわたる大量の乳びの漏出は,呼吸困難,低蛋白血症,リンパ球減少などをまねくため早急な治療が必要となるが,治療に難渋することも多い。

まず,保存的療法として以前から低脂肪食あるいは経静脈栄養が用いられてきたが,さらに近年ではオクトレオチドの有用性が報告1)されている。オクトレオチドはソマトスタチンのアナログ製剤で,本来は消化管ホルモン腫瘍や緩和医療におけるイレウス症状の改善に用いられる。オクトレオチドの投与により胸管内を流れるリンパ液が減少し,胸管破綻部の自然閉鎖,もしくは胸膜癒着療法による閉鎖が促進され,効果を発揮する。

胸膜癒着にはミノサイクリンやピシバニール(OK-432)が投与されることが多いが,タルク製剤も製品化され,使用することが可能となった。ただし,タルクは強力な癒着効果がある一方で,ごく稀に急性呼吸窮迫症候群をきたす危険性があるため,慎重に使用する必要がある。

保存的療法で軽快しない場合は,外科的な胸管結紮術の適応となる。胸管とその周囲の脂肪織を含めた一括結紮が最も安全で効果的であり,最近では胸腔鏡下に行われることが多い。胸管結紮によっても完治しない場合は,胸腔・腹腔シャントを行う。

【文献】

1) Bender B, et al:Eur J Cardiothorac Surg. 2016; 49(1):18-24.

【解説】

中田昌男 川崎医科大学呼吸器外科教授

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