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淋菌感染症[私の治療]

No.5117 (2022年05月21日発行) P.50

髙橋 聡 (札幌医科大学医学部感染制御・臨床検査医学講座教授)

登録日: 2022-05-20

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  • 淋菌感染症の主たる疾患は,男性の淋菌性尿道炎である。性行為により淋菌が性的パートナーから感染し,尿道に強い炎症を生じる。淋菌性ほど症状の程度が強くない非淋菌性尿道炎とは,同じ尿道炎でも治療法がまったく異なることから区別される。女性の子宮頸管炎や咽頭感染の原因にもなる。淋菌の多剤耐性化は国内外での重要な問題である。

    ▶診断のポイント

    淋菌性尿道炎の典型例では,強い排尿時痛,亀頭部の発赤,外尿道口からの混濁した排膿が特徴であり,検尿沈渣では高度の膿尿を認める。分泌物のグラム染色が可能であれば,グラム陰性(双)球菌を好中球の内外に認める。ここまでが外来での診断である。

    グラム染色鏡検でグラム陰性球菌を認めるようであれば,培養に提出し,同定,薬剤感受性試験へと進める。これらは後日結果が判明する。淋菌はわが国のみではなく海外でも多剤耐性菌としてその動向が注視されていることから,これらの検査は臨床的のみならず,疫学的にもきわめて重要である。ただし,後述するような非典型例も少なからず認めることから,核酸増幅法での検査も考慮する。クラミジア・トラコマティス感染を3割程度で合併することから,クラミジア・トラコマティス検出のために核酸増幅法検査を提出する必要がある。

    過去に有効であったペニシリン系抗菌薬,テトラサイクリン系抗菌薬は既に耐性化しており,フルオロキノロン系抗菌薬も一部は有効であるが,多くは耐性となっている。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    多剤耐性菌であることから,治療法は限局される。また,淋菌性尿道炎の3割程度で咽頭にも淋菌が感染しているとの報告があることから,有効な治療法は性器のみならず咽頭にも抗菌力を発揮できることが必須である。スペクチノマイシン塩酸塩水和物は淋菌の性器感染症には有効であるが,咽頭への移行性が十分ではないため,咽頭感染が少なからずあるという前提で治療するとすれば,同薬による治療は感染源を除去するための適切な治療とは言い難い。

    ペニシリン系抗菌薬,テトラサイクリン系抗菌薬,キノロン系抗菌薬は耐性化により有効ではないことから,投与しない。

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