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【識者の眼】「『世界保健デー』をみんなで盛りあげたい!」中村安秀

No.5118 (2022年05月28日発行) P.55

中村安秀 (公益社団法人日本WHO協会理事長)

登録日: 2022-04-22

最終更新日: 2022-04-22

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2022年、世界保健機関(WHO)は「世界保健デー(World Health Day)」のテーマを「Our Planet, Our Health(わたしたちの地球、わたしたちの健康)」とした。手前味噌になるが、日本WHO協会は4月7日に「世界保健デー2022」を全面オンライン開催した。山極壽一さん(総合地球環境学研究所所長)、渡辺知保さん(長崎大学学長特別補佐)の豪華パネルディスカッションや「ウィズコロナ 世界と共に」受賞動画の上映など、盛りだくさんのプログラムだった。

WHOは1948年4月7日に、すべての人々の健康を増進し保護するため、互いに他の国々と協力する目的で設立された。その設立日を記念して、4月7日が世界保健デーと定められた。世界中の国々で、健康や医療に関するセミナーや啓発キャンペーンが行われている。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック前の2018年4月に、東ティモール民主共和国で開催された世界保健デー・イベントにおいて基調講演をしたことがあった。首都ディリにある大きな会議場に、国際機関や大使館、医師や看護師などの保健医療関係者、NGO関係者、医学生・看護学生など400名が参集した。会議場の外では、熱帯の陽射しにもかかわらず多くの国際機関やNGOが出展し、保健大臣は一つひとつのブースを回り、若いスタッフに声をかけていた。文字通り、国をあげて健康を啓発する場としての世界保健デーがあった。

COVID-19の第1波・第2波で多くの命が失われたとき、世界各地では医療者に対して感謝のエールが寄せられていた。一方、日本では残念なことに、医療者やその家族は感染の可能性があるという理由で、社会から忌避される存在になっていた。健康に対する平時からの対話が少なすぎるのである。専門家や保健医療行政だけで固まらずに、社会全体で健康について議論し理解を高めていくために、世界保健デーはより有効に機能できるであろうと実感した。

「わたしたちの地球、わたしたちの健康」。WHOの推定では、毎年世界中で 1300万人以上が本来なら避けることのできたはずの環境要因で死亡しているという。今年はオンライン開催だったが、地球規模でわたしたちの環境や健康やいのちを考える絶好の場となった。来年の2023年4月7日には、医療界も行政も、当事者である住民や患者の方も巻き込んで、世界保健デーを国民的な大きな運動にしていきたい。

中村安秀(公益社団法人日本WHO協会理事長)[わたしたちの地球、わたしたちの健康

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