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【識者の眼】「新しいコアカリは、未来の社会へ向けた医療者からのメッセージである」松村真司

No.5118 (2022年05月28日発行) P.57

松村真司 (松村医院院長)

登録日: 2022-04-21

最終更新日: 2022-04-21

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2022年度は医学教育モデル・コア・カリキュラム(以下、コアカリ)の改訂時期にあたる。医学教育に関わる人々以外には馴染みの少ないものだが、コアカリとは、「各大学が策定する『カリキュラム』のうち、全大学で共通して取り組むべき『コア』の部分を抽出し、『モデル』として体系的に整理したもの」であるとされている。

各大学における学修時間の2/3はこのコアカリに充てることが求められている。地域医療実習の拡充やプロフェッショナリズム教育の進展、参加型臨床実習の拡大など、かつて自分たちが学んだ内容との違いを感じる医療者も多いと思われるが、これらはこれまでコアカリで示された内容にすべて沿ったものである。

医師である以上、その学びは卒前にとどまらず、一生涯にわたるものであるが、その出発点、文字通り核となるのがこのコアカリである。したがって、今後発表される改訂版のコアカリは、これからの医療を担う人材がどのような能力を身につけるべきかを示す、未来の社会に向けた医療者からのメッセージである。その内容について私たちはもっと注目すべきである。

本年度中の改訂版の発表に向けて、調査・研究班は精力的に作業を行っており、その議論や調査内容の一部は公開されている1)2)。これまでの議論では、「未来の社会や地域を見据え、多様な場や人をつなぎ活躍できる医療人の養成」というキャッチフレーズを基に、多職種で複合的な協力を行うことや、ビッグ・データやAIといった情報を活用できる能力など、社会の変化の中で活躍できる人材を育成する、という方針が示されており、この方向性について異論はない。しかしこの数年のコロナ禍を通じて我々が直面した課題、特に社会の厳しい視線に晒された内容、たとえば基礎研究の重要性、SNSや情報発信の在り方、医師の科学的態度、そしてなによりプロフェッショナリズムについて、具体的な内容がどのようなものになるかが特に注目されるところである。まもなく発表される改訂版が、未来の社会を見据えた視座からのものになることを期待したい。

【文献】

1)文部科学省:モデル・コア・カリキュラム改訂に関する連絡調整委員会(令和3年度〜).

   https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/116/index.html

2)文部科学省:医学・歯学教育モデル・コア・カリキュラムの次期改訂に向けた調査研究(大学における医療人養成の在り方に関する調査研究委託事業).

   https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/iryou/mext_01484.html

松村真司(松村医院院長)[医学教育]

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