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遺伝子検査と産業医 【日本では法制度が整備されておらず,産業医がどのように対応すべきかが課題】

No.4821 (2016年09月17日発行) P.61

加藤貴彦 (熊本大学公衆衛生学教授)

登録日: 2016-09-21

最終更新日: 2016-10-06

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2013年,米国の女優アンジェリーナ・ジョリーによる遺伝子検査結果に基づいた予防的乳房切除のメディア報道以来,日本でも遺伝子検査への関心が高まっている。また,遺伝子解析技術の進歩により,検査にかかる時間が短縮され,低価格での提供が可能になってきている。こうした遺伝子検査への関心の高まりや技術の進歩を背景に,日本でも遺伝子検査ビジネスへの新規参入が相次いでおり,一般の人でも遺伝子検査にアクセスしやすい環境になりつつある。

米国では,雇用が医療保険と密接に関わっているため,雇用と遺伝子検査をめぐる問題が早くから議論され,08年に成立した遺伝情報差別禁止法(Genetic Information Nondiscrimination Act:GINA)が医療保険・雇用領域における遺伝情報に基づく差別を禁止している。しかし,日本では遺伝子検査に関する法制度は今のところ整備されていない。労働安全衛生法の健康診断項目として,遺伝子検査は規定されておらず,安全配慮義務の範囲内での位置づけも明確ではない。

疾患感受性遺伝子や化学物質の代謝に関与する感受性遺伝子情報などは,保健指導や化学物質の曝露を判定する際に有益である。その一方において,産業医としては,労働者の安全や健康保持と同時に,労働者のプライバシー,裁量性,尊厳を守りつつ就業上の措置に関する意見を述べるという職務の性質上,取得したこれらの情報に関してどのように対応すべきか,考えるべき時期にきている。

【解説】

加藤貴彦 熊本大学公衆衛生学教授

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