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機能性ディスペプシアにおける治療戦略 【機能障害と精神症状のそれぞれに対し,薬物治療を含めた包括的ケアを行う】

No.4821 (2016年09月17日発行) P.60

中村祐三 (東邦大学心身医学講座)

端詰勝敬 (東邦大学心身医学講座教授)

登録日: 2016-09-21

最終更新日: 2016-10-06

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機能性ディスペプシア(functional dyspepsia:FD)とは,器質的異常を認めないが,食欲不振,胃もたれなど,機能的異常を認める疾患のことである。古くは「胃カタル」や組織学的に異常を認めない「慢性胃炎」がこの疾患にあたる。

FDの病因として,胃適応性弛緩障害,胃排出遅延,内臓知覚過敏,胃酸分泌,心理社会的因子などが考えられ,機能的異常や胃酸分泌によるものに関しては,酸分泌抑制薬や消化管運動機能改善薬により症状改善がみられるようになった。また,ストレス─脳─腸相関より,心理社会的要因はFDの症状を増悪させるだけでなく,FDの悪化により不安や抑うつ気分を引き起こし,気分障害などを合併しやすいのではないか,と推測されている。そのためFDの治療には,①良好な医師─患者関係の構築,②心理社会的側面を考慮に入れた対応,③機能障害に対する薬物療法(初期治療)と精神症状に対する薬物療法(二次治療),の3つが重要である。

最新のガイドライン1)では,FDの二次治療として抗うつ薬・抗不安薬が有効とされているが,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitors:SSRI)は内服初期の嘔気があるため,有効性が示されていない。そのため,SSRIのこの副作用も視野に入れた,治療戦略と有効性の証明が今後期待されるところである。

【文献】

1) 日本消化器病学会, 編:機能性消化管疾患診療ガイドライン2014─機能性ディスペプシア(FD). 南江堂, 2014.

【解説】

中村祐三,端詰勝敬 東邦大学心身医学講座 教授

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