株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「総合診療医のミスマッチ」島田和幸

No.5102 (2022年02月05日発行) P.60

島田和幸 (地方独立行政法人新小山市民病院理事長・病院長)

登録日: 2022-01-11

最終更新日: 2022-01-11

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

私が現在勤務する中規模の公的総合病院(300床、常勤医師約60人、年間救急搬送数約4000件)は、どのような医師をどれだけ確保できるかが、最重要課題のひとつです。そして、新しい専門医制度の専攻医養成の自前プログラムを持たない中小病院は、大学医局が主たる医師の供給源となっています。卒後臨床研修を終えたすべての医師は何らかの領域の研修プログラムを選択する専門医制度が導入され、大学に医師が再び戻りつつあります。ところが、現在の専門医制度では各領域の専門医の定数はありません。総合診療医も、そのうちのひとつとされ、総合診療専門医コースは現在「マイナー科」です。

しかし、地域の急性期病院の現場では、「総合診療科」は決してマイナーではありません。高齢者の急性期疾患は、日常生活が自立している場合は、各臓器専門医の担当となりますが、病前から既に要介護状態の場合、しばしば総合的な立場からの治療やケアが主となります。

介護施設や在宅から頻繁に搬送されてくる高齢者の誤嚥性肺炎や尿路感染、末期状態などの患者を誰が担当するか、地域の一般急性期病院は、いや大学病院さえも苦慮しています。医療資源の効率的利用という観点からは、優先順位は、①在宅診療医、②慢性期病院や地域包括ケア病院の医師、③急性期病院の総合診療医、④急性期病院の臓器別専門医であり、国もその意向と考えられます。しかし、現状は超高齢社会における医療提供のありかたに対して、国民や医療従事者の間で明確な社会的合意が形成されていません。

ここで、わが国の総合診療専門医は内科専門医と家庭医(所謂Dr Gと赤ひげ医者)の両面を併せ持つことを想定しています。大学の総合診療科は、内科診断学を推し進める一方、地域の一般病院では、家庭医的な包括的マネジメントに対する需要が高く、そのことがミスマッチになっています。本院では、目下のところ総合診療医の大学からの派遣が途絶えており、「専門医が総合医的マインドを持つ」ことで対処せざるをえません。

現在、病院で総合診療医が必要とされているにもかかわらず、絶対的に不足しており、かつ本来の役割を発揮する場が形成されていないというミスマッチは問題だと思います。

島田和幸(地方独立行政法人新小山市民病院理事長・病院長)[総合診療][地域医療][専門医制度]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

page top