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腎盂腎炎[私の治療]

No.5094 (2021年12月11日発行) P.43

土谷順彦 (山形大学医学部腎泌尿器外科学講座教授)

登録日: 2021-12-12

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  • 腎盂腎炎は通常,尿道から腎への細菌の逆行性感染により生じる。基礎疾患を有さない急性単純性腎盂腎炎は性的活動期の女性に多い。一方,尿路の異常や糖尿病,易感染性など全身性の基礎疾患を有する複雑性腎盂腎炎は性別や年齢によらない。重症化するとurosepsis(ウロセプシス)と呼ばれる敗血症をきたす。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    発熱,悪寒,患側の腰背部痛,叩打痛が主徴であり,悪心・嘔吐などの消化器症状がみられることがある。膀胱炎が先行することが多く,排尿痛や頻尿などの排尿症状を伴う。

    【検査所見】

    尿検査で膿尿と細菌尿が認められる。女性では腟分泌物の汚染(コンタミネーション)の可能性があり,膿尿の判断には慎重を要する。抗菌薬の感受性をみるため,抗菌薬の投与前に尿培養検査を提出する。血液検査では白血球増多,核の左方移動,CRP上昇などの炎症反応の亢進がみられる。他疾患との鑑別や尿路の異常(水腎症や尿路結石),気腫性腎盂腎炎,膿腎症の有無を確認するために画像診断(超音波検査やCT)を行う。ウロセプシスが疑われる場合には,血液培養を行い,qSOFA(quick sequential organ failure assessment)とSOFAスコアリングシステムに基づいて,経時的な全身状態のモニタリングを行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    治療の基本は感受性を有する抗菌薬の投与であるが,治療を開始するにあたり,①尿路の閉塞の有無,②ウロセプシスまたはそれに移行するリスクの有無を確認する必要がある。①の場合,薬物療法に加えて尿管ステントカテーテルや腎瘻造設術による尿路のドレナージを行う必要がある。②の場合は,敗血症に対する治療とモニタリングが必要となる。抗菌薬は広域スペクトラムを有する薬剤で開始し,尿・血液培養での感受性試験の結果から,感受性を有する薬剤に切り替える。通常,治療開始後から解熱まで約3日を要するため,4日以上解熱しない場合には感受性が低い可能性がある。3日後を目安に尿・血液培養の結果に基づいてde-escalationを行う。抗菌薬の総投与期間は静注,経口を含めて原則14日としているが,複雑性や反復性腎盂腎炎,その他重篤な腎盂腎炎に対しては14日を超える投与が必要なことがある。

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