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脳の病理的解析の際に行う「鍍銀染色」で銀の析出が生じる理由

No.5094 (2021年12月11日発行) P.49

阿部 仁 (がん研有明病院臨床病理センター・臨床検査センター技師長)

登録日: 2021-12-09

最終更新日: 2021-12-07

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脳の病理的解析の際に「鍍銀染色(とぎんせんしょく)」という染色法が用いられます。染色原理について,鏡をつくる際に利用される「銀鏡反応」と説明されています。そもそも,銀鏡反応の銀の析出がガラス表面で生じるのも不思議ですが,脳の組織切片で異常タンパク質が凝集している部分で同様の銀の析出が生じる理由がわかりません。何か析出しやすい状況でも生まれているのでしょうか。(岐阜県 K)


【回答】

【脳の鍍銀染色は各種の銀イオンが神経原線維,軸索,特定の異常タンパク質などに結合する性質を利用して銀を析出させて証明する】

脳神経病変の病理組織学的検索にはヘマトキシリン・エオジン染色を基本として,ボディアン(Bodian)染色,ビルショウスキー(Bielschowsky)染色,ガリアス・ブラーク(Gallyas-Braak)染色などの鍍銀染色法が用いられています1)〜3)。これらの鍍銀法は神経原線維,軸索,樹状突起などが銀イオンと結合する性質を利用した嗜銀染色です4)

ビルショウスキー染色は,沈着したアンモニア銀をホルマリン液で還元して黒変させます。ボディアン染色は,組織タンパク質のアミノ基にプロテイン銀が沈着し,還元液で処理することで黒色させます(図1左)。ガリアス・ブラーク染色は,アルカリヨウ化銀が神経原線維に特異的に沈着し,化学反応により銀コロイド粒子となります。さらに,沈着した銀コロイド粒子は酸化還元剤により銀粒子が増幅されて,顕微鏡下で観察可能となります(図1右)。


これらの銀染色の中でガリアス・ブラーク染色は,正常細胞はまったく染色されず,神経原線維変化(neurofibrillary tangle),老人斑の変性神経突起,neuropil thread,進行性核上性麻痺でのリン酸化タウの蓄積,多系統萎縮症でのα-シヌクレインの蓄積など異常な構造物だけを黒色に明瞭に染色します(図1右)5)

脳神経病変における鍍銀染色は,病理診断に重要な情報を提供してくれます。

【文献】

1)石川喜美男, 他:鍍銀染色法. 病理検査技術教本.日本臨床衛生検査技師会, 監.丸善出版, 2017, p232-4.

2)Braak H, et al:Neurosci Lett. 1987;76(1):124-7.

3)羽賀千恵, 他:検と技.2002;30(6):519-28.

4)岩垂 司:病理組織標本作製技術. 下巻.日本病理学会, 編. 医歯薬出版, 1981, p68-72.

5)新井信隆:神経病理インデックス. 第1版.医学書院, 2005, p130-43.

【回答者】

阿部 仁 がん研有明病院臨床病理センター・ 臨床検査センター技師長

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