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赤痢アメーバ症[私の治療]

No.5092 (2021年11月27日発行) P.43

五十嵐正広 (がん研有明病院下部消化管内科顧問)

登録日: 2021-11-28

最終更新日: 2021-11-22

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  • アメーバ赤痢は,原虫であるEntamoeba histolyticaの感染により大腸粘膜に潰瘍性病変を形成しアメーバ性大腸炎を発症させる。また,腸管外病変として肝膿瘍などの原因ともなる感染症である。感染様式は,肛門と口唇が直接接触する糞口感染とE. histolyticaの囊子による汚染飲食物接種による感染の2様式がある。わが国では汚染地域への渡航での感染例のほか,海外渡航歴のない国内感染者が85%以上を占めている。男性同性愛者に多くHIV感染を併存している症例も多いとされているが,性風俗での異性間感染症例も増加しており性感染症のひとつに分類されている。国内で年間1000例以上の届け出(五類感染症に分類)があり,増加傾向にある。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    血便,粘血便や下痢,腹痛,重症例ではテネスムスなどが主な症状である。発症は緩徐で,感染から症状出現まで数カ月以上に及ぶものが多い。しかし,無症状で大腸癌検診や人間ドックなどの便潜血検査の二次検査として施行される内視鏡検査で発見される症例もある。肝膿瘍合併例では発熱を伴うことがある。

    【検査所見】

    大腸内視鏡検査で発見されることが多い。病変は主に盲腸や直腸に分布するが,大腸全域にみられる症例もある。タコイボ様びらん,不整潰瘍,打ち抜き状潰瘍,類円形潰瘍,腫瘤形成様潰瘍,偽膜を伴う潰瘍などが特徴的な内視鏡所見である。組織生検(粘液内の栄養型にはPAS染色が有用)により栄養型を証明する。内視鏡検査時に潰瘍粘液を採取し直接鏡検してアメーバ虫体を確認する方法は診断率が高い。補助的手段として,アメーバ抗体の測定も参考になる(現在は検査不可になっている)。糞便検査では検出率が低い。本症と診断した場合は,肝膿瘍の合併が5%程度にみられるので,超音波検査やCT検査で肝膿瘍の有無をスクリーニングしておくことが必要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    診断が確定したら薬物療法を速やかに行う。治療効果は自覚症状の消失で判断できるが,治療後内視鏡検査により病変の消失を確認することが大切である。大半は治癒するが,治療薬の投与量不足や囊子が完全に駆除されていない症例(同性愛者などでパートナーが感染者の場合)では再感染例もみられるので,パートナーの感染の検索と治療も必要である。

    【治療上の一般的注意&禁忌】

    自覚症状や臨床経過,内視鏡所見から潰瘍性大腸炎と誤診され,ステロイドが投与された場合,急速な増悪や穿孔に至る症例があるので,注意が必要である。鑑別が困難な場合には,アメーバ赤痢の治療を優先する。アメーバ赤痢の場合は1~2週間程度で所見は改善・消失する。再発例では臨床症状消失後も糞便中に囊子が残存している可能性があるので,腸管内に残存する囊子駆除のためパロモマイシン硫酸塩の投与を検討する。本症は五類感染症に分類されており,診断が確定したら所轄の保健所に7日以内に届け出の義務がある。診断後メトロニダゾールを投与するが,投与期間中はジスルフィラム作用による副作用(悪心・嘔吐など)の出現頻度が高いので禁酒とする。

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