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【識者の眼】「リハビリテーションは摂食・排泄の自立から行うべきです」武久洋三

No.5086 (2021年10月16日発行) P.64

武久洋三 (医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)

登録日: 2021-10-04

最終更新日: 2021-10-04

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これからのリハビリテーションは摂食、排泄機能の回復を優先してくれませんか。そうすれば、早くに日常復帰できる人が増えるでしょう。

今や病院は高齢患者で溢れています。大学病院も高齢患者は70%以上を占めているのです。

急性期病院では、ほとんどリハビリテーションは行われず、介護ケアもおろそかになりがちです。入院中ずっとベッドフィックスされた状況が続いた結果として要介護状態となった患者が増えていて、介護ニーズに対して供給が追いついていません。患者としては病気になり、良くなることを望んで入院したはずなのに、寝たきりになるのは忸怩たるものがあるでしょう。現在は、急性期病院退院後、地域包括ケア病棟か回復期リハ病棟に転院後、初めてリハビリテーションをしてもらっているのが現状です。そのため、急性期病院入院中に関節が拘縮し、立位保持もままならないようになり、おむつかバルーンカテーテルを留置した状態で転院しているのです。そのような状況からできるだけ早く日常復帰をしてもらうための強力なリハビリテーションが必要です。

まずはリハビリテーションを提供する際にどの機能回復を優先すべきかということを考えなければなりません。いまだに理学療法士主体の訓練は、立位保持や歩行練習から行われているのが通例です。

しかし、患者にとって自分が日常復帰するために優先して回復させたい機能は、「自分で食べて」「自分で排泄する」ことではないでしょうか。特に女性は高齢であっても排泄介助を受けることは、同性の介助であっても屈辱でしょう。

おむつをしたまま、鼻から栄養チューブを挿入したまま平行棒で歩行訓練をしている患者を目にする度に、職員に「何か間違っていないか」と大声で言ってしまいます。

嚥下障害に陥っている患者でも嚥下訓練を実施したら70%程度は自力摂取できるようになり、入院時にバルーン・オムツを使用していた症例に排泄訓練を実施したら、退棟時にはオムツ使用を約70%削減することができました。

とりあえず最初は歩けなくてもよいから座位保持、嚥下機能評価を行い、患者の状態に合わせた適切な摂食嚥下訓練、そして続けてトイレ誘導するかベッドサイドのポータブルトイレでの自排尿の繰り返し訓練を優先して行いましょう。そして並行して歩行訓練を行うべきです。自分で食べて排泄できれば、患者本人も前向きな意欲を取り戻してくれるでしょう。

武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[リハビリテーション]

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