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【識者の眼】「コロナ第5波の現場の危機感とワクチン接種機会活用の提案」北村明彦

No.5076 (2021年08月07日発行) P.56

北村明彦 (八尾市保健所健康まちづくり科学センター総長)

登録日: 2021-07-28

最終更新日: 2021-07-28

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7月26日現在、新型コロナウイルスの第5波が急拡大中である。報道の通り、保健所の現場では、20〜40代を中心に行動範囲が広い若い世代の感染者が多くを占める現状である。感染源は不明が最多で、次いで、職場、研修会、多人数の集まり、旅行、深夜営業などが見受けられる。若年〜壮年者は家族、同僚、友人、学校と多くの繋がりがあるため、濃厚接触者は多数にのぼる。感染者や濃厚接触者への電話連絡に始まり、検査の手配、宿泊療養、入院手続き、健康観察等の多岐にわたる保健所の業務は増すばかりである。

一方、高齢者では発症が全体的に抑えられていることから、それ以下の世代へのワクチン接種が間に合わなかったことが第5波の拡大につながっていると推察される。このままの状態ではこの流行は止められないであろう。感染者、濃厚接触者ともに一定期間の療養や自宅待機が要請されるため、合わせると労働損失や学業面の損失は大きく積み上がる。東京五輪が終わるまで…と現在の人流を止められなければ、宿泊療養者や入院患者は増加の一途を辿り、第4波の医療逼迫の反省から病床や宿泊施設のさらなる体制強化が図られているものの、楽観はできない。五輪とは独立して早急に抜本的な対策を講ずる必要があると考える。

ワクチン接種に関して思うことを一つ。わが国では、高齢者全体の約80%以上がワクチン接種を完了する見込みである。この8割という高反応率は公衆衛生的戦略の大きな入り口ともなる。今後、第3回目以降のワクチン接種に始まり、将来的にワクチンの定期的接種が定着する可能性は十分ある。ワクチン接種当日は、問診と15〜30分の副反応観察が行われる。この機会を利用して、高齢者に対してフレイル状態のチェックとその予防の啓発を行ってはいかがであろうか。八尾市では、コロナフレイルの注意喚起のための啓発用のチラシを作成し、集団接種会場で高齢者に情報提供している(https://www.city.yao.osaka.jp/0000057589.html)。また、別の自治体では、ワクチン接種会場で血圧測定を行い、多くの未発見高血圧者を見つけ出し受診勧奨していると聞く。ワクチン接種を核とした健康管理システムは、これからの時代に向けた新しい発想であろう。

北村明彦(八尾市保健所健康まちづくり科学センター総長)[公衆衛生的戦略]

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