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【識者の眼】「コロナ関連システムに振り回されるかかりつけ医」土屋淳郎

No.5068 (2021年06月12日発行) P.60

土屋淳郎 (医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)

登録日: 2021-06-03

最終更新日: 2021-06-03

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新型コロナウイルスのワクチン接種が始まったが、メディアの情報が溢れ、住民は少し困惑しているようだ。当院でも開院前から行列ができ、近所を歩いていると呼び止められ説明を求められる。住民対象の集団接種は市区町村ごと、個別接種であれば医療機関ごとに予約方法が異なる上、国が行う大規模接種も加わり、住民にとって対応が複雑になっている。

一方接種を行う医療機関にとって、都の医療従事者優先接種の予約システムのトラブル(一時閉鎖するも5月11日に再開)も予約管理が混乱する一因になっていると思われるが、予約管理だけでなく、ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)やワクチン接種記録システム(VRS)など、様々なシステムの利用が求められていることも負担になっている。さらに診療・検査医療機関は新型コロナウイルス感染症医療機関等情報支援システム(G-MIS)、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)の利用も必要である。

かかりつけ医として地域医療に貢献したいと思っていても、これだけシステムが多いと「対応できない」と躊躇する医療機関もあり、報道で「システムハラスメント」という言葉も出ている状況では、システムの構築に関して見直しが必要ではないかと考えられる。

今年3月に開催された日本医師会医療情報システム協議会で、システム構築の課題に対して「プラットフォームの一元化」や「IDの一本化」といった話は出ており、実際G-MISは再構築されてIDaaS環境が整い、G-MISと同じID/PWでVRSにログインできるようになった。しかし、VRSは読み取り性能(違う番号が表示されることがある)以外にも、他自治体の住民氏名は表示されない(個人情報保護法制2000個問題に起因すると思われる)、期待されているV-SYSとの連動もできないなどの課題もあり、まだ「使いやすくなった」とは言えない。5月末日にはV-SYSの一部データが消えるトラブルもあり、未熟なシステムに振り回されているのが現状だ。

今後も東京五輪を見据えて「統合型健康情報管理システム」など新システムの開発が検討されているようだが、現状でも課題が多い中で、新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)のような失敗を繰り返さずに開発〜運用はできるのだろうか。プラットフォームの一元化やユーザーインターフェースの改善などを行い、ユーザー視点に立った使いやすいシステムに成熟してほしいと切に願うところである。

土屋淳郎(医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)[医療情報システム]

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