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【識者の眼】「社会と教育について子供とともに考えよう」小倉和也

No.5068 (2021年06月12日発行) P.64

小倉和也 (NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク会長、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)

登録日: 2021-06-02

最終更新日: 2021-06-02

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小学生から大学生までのメンタルに関する相談が増えている。元々地方では心療内科・精神科が希少な上、子供や未成年者のメンタル相談を受ける医療機関も少ないため、身体症状と合わせて家庭医として相談に乗ることが多かったが、コロナ禍での増加には驚くばかりだ。

話を聴く中で気づくのは、コロナによる影響の前から、潜在的に家庭内や学校で感じていた違和感や課題が、この状況下で顕在化して相談に来るケースが多いということだ。自粛や休校により自宅で過ごす時間が増え、学校が再開されて改めて直面する課題について、この機会に見直し、居心地のよいあり方と関係性を見出すサポートをすることが多いのだが、さらに対話を進めると、私たち大人も変わらなければならないことに気づく。

大人の社会は子供が学校に行けなくなると、病院を受診して診断・治療し、学校に行けるようになることを当然のように目標としてしまう。そのため大人が決めた社会の仕組みや規範に合わせられるよう子供の考えや行動を変えようとしてしまいがちだが、大人の社会も変わる必要があるのではないだろうか。コロナ禍でもオンラインやそれぞれのペースでの学習が可能であることも見えてくる中で、そもそも学校とは、社会の中で人が育つこと、育てることとはどういうことなのか、これまでの枠組みを見直し、一から考えてみることも必要だと感じている。

子供たちと話していると、社会との関わりについて大人とは大きく違った目線で、真剣に感じ考えていることがわかる。大人だけで考えず、当事者としての子供と対話しながら、ともに新たな社会を築いていく仲間同士として考えていくことが、よりよい未来につながるのではないだろうか。今後も対話を続けながら、教育関係者とも連携しつつ、子育てや教育の社会の中でのあり方について家庭医の立場から考え行動していきたい。

小倉和也(NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク会長、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)[メンタル相談の増加]

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