株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【一週一話】エボラ出血熱の脅威

No.4715 (2014年09月06日発行) P.55

谷口 怜 (国立感染症研究所ウイルス第1部第1室 )

下島昌幸 (国立感染症研究所ウイルス第1部第1室 室長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-27

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 2014年3月にギニアで発生が報告されたエボラ出血熱の流行は5月に収束をみせたが,その後隣国のリベリア,シエラレオネへ広がり,ナイジェリア,セネガルでも感染者が確認され未曾有の大流行となっている。8月28日現在,感染者は疑い例も含め3069名,死亡者は1552名に及ぶ1)。過去の流行が人口の少ない山村部であったのに対し,今回の流行は首都や都市部でも発生しており,収束の兆しはない。

    エボラ出血熱はエボラウイルス属のウイルスの感染により引き起こされる。エボラウイルス属は5種(エボラウイルス,スーダンウイルス,ブンディブギョウイルス,タイフォレストウイルス,レストンウイルス)で構成される。このうちレストンウイルスはアジアで,他の4種はアフリカで感染が確認されている。西アフリカで発生しているエボラ出血熱はエボラウイルス種による。代表的な臨床症状は,2~21日の潜伏期後の高熱を伴う頭痛,腹痛,筋肉痛,関節痛,嘔吐,下痢である。重症例での特徴的な臨床症状として粘血便,吐血,歯肉・皮下からの出血が挙げられる。出血は必ずしもすべての患者で認められるものではなく注意が必要である。致死率はエボラウイルスで90%,スーダンウイルスで60%に及ぶ。一方,レストンウイルスはサルで致死性の出血熱を起こすが,ヒトへの病原性は報告されていない2)

    残り786文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top