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【識者の眼】「政府は科学的根拠がない感染症対策をいつまで続けるのか」渡辺晋一

No.5059 (2021年04月10日発行) P.60

渡辺晋一 (帝京大学名誉教授)

登録日: 2021-03-30

最終更新日: 2021-03-30

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感染者が十分減らないまま、緊急事態宣言が解除され、リバウンドが起きてしまった。政府の分科会が作ったステージ分類は、しばしば政治利用されているが、科学的根拠があるわけではない。また「感染再拡大防止の5つの柱」が提唱されたが、目新しいことはない。感染者が増大するかは、人流を見ればわかる。つまり最初に若年者、その後家庭内、そして高齢者が増え、いずれ病床のひっ迫が生じ、死亡者が増える。この流れは医学教育を受けている人であれば、容易に予想できる。しかし政府が行うのは飲食店の時短営業である。この感染症は主に飛沫感染で拡大することが分かっている。政府は、「マスク会食」を提唱しているが、マスクをしながら食事はできない。提唱すべきは、一人で黙って食事をし、会話をするのは屋外でマスクをきちんとしてからである。実際海外ではテイクアウトか屋外の食事を許可し、飲食店内の食事は禁止している所が多い。

政府は「5つの柱」の中で変異ウイルスの監視体制の強化やモニタリング検査を行うというが、検査数を増やすのは勿論だが、感染者を隔離しなければ意味がない。感染症対策の基本は、①感染者の発見、②隔離であるが、日本は①②を最初から行ってこなかった。1年前から私は、少なくとも病院や介護施設などでは定期的なPCR検査を行うべきと主張してきた。また陽性者を隔離する隔離施設を作るべきであるが、これもできていない。無症状、軽症者であれば、プレハブ施設でも十分で、その方が医師や看護師の配置人数が少なくて済む。

また医療体制の強化というが、医師や看護師を一気に増やすことはできない。そもそも日本の皆保険制度は出来高払いのため、専門医を育てるシステムになっていない。何故ならば日本では、専門医であっても非専門医と同じ技術料で、安く抑えられている。そのため、不必要な検査や投薬を行い、あまり手間がかからない患者を入院させることにより、病院は収益を維持している。これが日本ではベッド数が多く、本当の専門医が少ない理由と思われる。

ワクチン接種によりGo Toも可能になると思われるが、日本ではワクチン接種が大幅に遅れ、将来が見通せない。経済に強く舵を切ったトランプ時代の米国やボルソナロ大統領のブラジルは日本の反面教師で、感染拡大を早く抑え込むには、科学的根拠に基づいた対策と情報開示、ロックダウンなどの強い措置が必要である。

渡辺晋一(帝京大学名誉教授)[新型コロナウイルス感染症]

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