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B型肝炎[私の治療]

No.5056 (2021年03月20日発行) P.32

大澤陽介 (国際医療福祉大学病院消化器内科病院教授)

考藤達哉 (国立国際医療研究センター肝炎免疫研究センターセンター長)

溝上雅史 (国立国際医療研究センター研究所ゲノム医科学プロジェクト長)

登録日: 2021-03-18

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  • B型肝炎ウイルス(HBV)が肝細胞に感染することにより肝臓に炎症が生じ,肝細胞障害をきたす病態である。短期間にウイルスが消失する急性B型肝炎と,6カ月以上肝炎が持続する慢性B型肝炎に大別される。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    急性肝炎の症状としては,発熱,倦怠感,食欲不振,悪心・嘔吐,腹痛,褐色尿,灰白色便,関節痛,黄疸などであるが,急性B型肝炎に特異的な症状はない。慢性肝炎から肝硬変に進展すると,浮腫,腹水,黄疸が出現するが,これらは肝硬変症に共通した症状であり,B型肝硬変症に特異的な症状はない。

    【感染経路】

    垂直感染(母子感染):慢性感染症の原因であるが,わが国では感染予防対策がとられており,新規の発症は少ない。

    水平感染:性交渉,薬物常用者の注射器の再利用,不潔な処置(ピアス,入れ墨)による。急性感染症の原因であるが,慢性感染に移行することがある。

    【経過】

    急性肝炎:自然治癒することが多いが,劇症化することがある。

    慢性肝炎:小児期に感染すると,免疫寛容期(無症候性キャリア)を経て,多くは青年期に免疫応答期,低増殖期〔非活動性キャリア(HBe抗原陰性化)〕へと移行する。その後,寛解期に移行する。免疫応答期やHBe抗原が陰性でも肝障害が持続する状態が6カ月以上続くと慢性肝炎となる。また,成年期の感染であっても急性肝炎から慢性肝炎に移行する症例が存在し,特にHBVゲノタイプAやHIV共感染者では慢性化率が高い。慢性肝炎は肝硬変や肝細胞癌に進行する可能性がある。

    【検査】

    HBV感染診断のゴールドスタンダードはHBs抗原検査である。HBs抗原陽性の場合,肝機能検査およびHBV核酸増幅検査,HBe抗原,HBe抗体,IgM-HBc抗体,IgG-HBc抗体,コア関連抗原,HBs抗体,HBVゲノタイプなどを測定し,急性・慢性の鑑別や持続感染者であれば,上述のどの時期かを確定する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    【急性B型肝炎】

    肝機能をモニターし,劇症化が予測される場合にはプロトロンビン時間が40%を下回る前にラミブジンを投与する(保険適用外)。なお,キャリアから重症化が予測される場合は,プロトロンビン時間が60%を下回る前にラミブジンを投与する(保険適用外)。重症化した際には,人工肝補助療法や肝臓移植術などを検討する(「急性肝不全(劇症肝炎)」の稿を参照)。感染予防にはワクチンが有効である。B型肝炎ワクチンは定期接種化されており,0歳児に限り公費で接種を受けられる。

    【慢性B型肝炎・肝硬変】

    ALT 31IU/L以上かつHBV-DNA 2000IU/mL以上が治療対象である。肝硬変の場合は,HBV-DNAが陽性であれば治療対象である。慢性肝炎の治療は,ペグインターフェロンアルファ(Peg-IFNα)を用いる治療と,核酸アナログ製剤を用いる治療に大別される。初回治療ではPeg-IFNαの使用を第一に検討する(種々の副作用があり,十分なインフォームドコンセントが必要)。特に,若年者や挙児希望者など,核酸アナログ製剤の長期継続投与を回避したい症例では第一選択となる。Peg-IFNαは期間を限定して使用するが,治療反応例では投与終了後に追加治療は不要となる。しかし,治療効果は核酸アナログと比較し低く,副作用も認められる。肝硬変に対する適応はない。

    核酸アナログ製剤は,ほとんどの症例で抗ウイルス作用を発現し肝炎が鎮静化する。Peg-IFNα不適応症例や肝硬変に至っている症例では,初回から使用する。副作用も少ないが,中止による再燃率が高く長期投与が必要である。核酸アナログ製剤の第一選択薬はエンテカビルおよびテノホビルである。再治療では,前治療が従来型インターフェロン製剤であったもの,あるいはPeg-IFNαに反応したものの再燃した症例ではPeg-IFNα治療を検討する。一方,Peg-IFNαにより肝炎の鎮静化が得られなかった例では,核酸アナログ製剤を使用する。ラミブジン・アデホビル・エンテカビル耐性ウイルスに対しては,テノホビルを使用する。インターフェロン製剤と核酸アナログ製剤の併用投与による治療効果の向上についての十分なエビデンスはない。

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