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【識者の眼】「障害児に対する虐待対応と予防」小橋孝介

No.5057 (2021年03月27日発行) P.59

小橋孝介 (松戸市立総合医療センター小児科副部長)

登録日: 2021-03-04

最終更新日: 2021-03-04

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児童虐待は、「児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)」第二条で「保護者がその監護する児童について行う」虐待行為と定義されている。障害児に対する虐待では、それが保護者によって行われている場合は児童虐待防止法に則って児童相談所や市町村へ通告し、事後対応が行われる。しかしながら、障害者福祉施設(児童発達支援事業所、放課後等デイサービス、障害児入所施設など)内で行われる虐待は虐待者が保護者ではなく職員であり、児童虐待ではなく障害者虐待の枠組みでの対応が求められる。

2012年に「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(障害者虐待防止法)」が施行された。この中で、虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は「速やかに、これを市町村(又は都道府県)に通報しなければならない」という義務を定めており、施設職員による虐待を疑った場合は市町村の障害者虐待防止センター等に通報を行う。しかし、施設という組織内で、多くの障害児は自ら被害を訴えることが難しく、その実態はなかなか見えてこない。

児童虐待と同様に障害者虐待も事後対応だけではなく、予防も重要である。2021年2月に日本子ども虐待防止学会障がい児虐待予防ワーキンググループの作成した「障害児虐待予防マニュアル」が公開された1)。保護者による虐待については、児童虐待の観点から予防や対応が行われることから、本マニュアルでは主に施設内での障害児虐待の予防について総論から具体的方策まで書かれている。

この内容は、病院や診療所など障害児だけではなく、広く障害者に関わる組織において参考になる。障害者虐待の予防のためには、「自分たちだけで考えるのではなく、組織を客観的に捉える視点、常に新しい情報を入れ改善していく視点等、状況の変化に適応して改善し、透明性のある組織にしていくための学びと連携」が求められる。これは虐待予防だけでなく、医療事故予防にも通じ、ひいては組織そのものの成長にも必要不可欠な要素である。

【文献】

1)日本子ども虐待防止学会障がい児虐待予防ワーキンググループ. 障害児虐待予防マニュアル.

   [https://jaspcan.org/wp-content/uploads/2021/02/prevention_manual.pdf] 

小橋孝介(松戸市立総合医療センター小児科副部長)[子ども虐待][障害者虐待][子ども家庭福祉]

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