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【識者の眼】「東京2020オリンピック競技大会に向けてホストタウンで準備を進めるには」和田耕治

No.5053 (2021年02月27日発行) P.56

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2021-02-15

最終更新日: 2021-02-15

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東京2020オリンピック競技大会まで、もう半年ない。新型コロナの世界の流行状況を考えると、従来のような形で開催できるとは多くの人が考えていないであろう。

そろそろ現実を見据えて、大会において「行うこと」「行わないこと」を示していただきたいものである。例えば、競技によって感染リスクは異なる。お互いに触れる機会が多いなら、誰かが陽性と診断された場合の対応についてどうするのか。また、観客はどうするか。無観客か、それとも国内だけか。

タイムラインを具体的に区切って、いつまでに何が達成されれば「行う」、または「行わない」を示した計画表を今すぐにでも示す必要がある。

開会式は7月23日であるが、その前に選手を受け入れることになるホストタウンはもっと時間的な制約がある。地元の感染対策を担っている医療者は、これまでは新型コロナの診療で時間を多くとられていた。オリンピックの感染対策はこれからだが、それと同時にワクチン接種も行わなければならない。

筆者は、少しでも地域での議論と対策が推進することを願って、「東京オリンピックパラリンピックにおけるホストタウンでの新型コロナウイルス感染対策準備アクションチェックリスト」を作成して公開している(https://plaza.umin.ac.jp/~COVID19/core/host_town_infection_control_checklist.pdf)。

チェックリストには体制作りと個別の対策の2種類がある。大事なことは、関係者で担当者を決めるなどの体制作りである。自治体、受け入れを行う施設、そして相手国など様々な関係者がいる。この「誰が」の主語を決めるのが難しい。

感染対策や医療体制の整備を自治体がどこまで行い、また受け入れを行う施設がどこまで行うのか。費用の負担にもつながる話であり、議論が進んでいない自治体も多い。そもそも地元の人とのふれあいの機会も難しくなったため、自治体は海外からの選手団を受け入れるメリットが感じられず、追加費用の負担も難しくなっている。さらにはボランティアの感染対策をどうするか、相手国はきちんと対策を行ってくれるのかなど課題は多い。

大会の直前での中止、または現場が大混乱するような事態など日本の評判を落とすことにならないようにしたい。1年後の2022年2月4日には2022年北京オリンピックが開幕する。冬期の競技は密になるものも少なく、感染対策もしっかりして行われそうである。

ピンチをチャンスにとはよく言われるが、何よりも具体的な計画表が早くほしいものである。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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