株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

特集:メニエール病の診療ステップ1・2・3

No.5049 (2021年01月30日発行) P.18

將積日出夫 (富山大学医学部耳鼻咽喉科頭頸部外科学講座教授)

登録日: 2021-01-29

最終更新日: 2021-01-27

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

1982年富山医科薬科大学卒業,86年富山医科薬科大学耳鼻咽喉科助手,95年同大学講師。2006年富山大学耳鼻咽喉科頭頸部外科助教授,12年より現職。

1 メニエール病とは何か?
・メニエール病とは,反復する回転性めまい発作に随伴する難聴,耳鳴などの蝸牛症状を特徴とする特発性内リンパ水腫である。内リンパ水腫形成の機序は,内リンパ液の過剰産生,吸収障害などが原因と推定されている。
・メニエール病では女性患者が多く,また,専門技術者,既婚者,几帳面で神経質な性格の患者が多いのが特徴である。
・メニエール病の好発年齢は30~50歳代であるが,近年,60歳以上の高齢者でも新規発症例が報告されており,高齢化のスピードが先進諸国の中で最も早いわが国では,高齢メニエール病患者の増加がよりいっそう問題となる可能性がある。

2 メニエール病の診断基準
・1974年に厚生省メニエール病調査研究班により「診断の手引き」が発表され,めまいと聴覚症状(難聴,耳鳴,耳閉感)を併発する「確実例」と,いずれかひとつの症状をもつ「疑い例」に分けられた。
・2008年に厚生労働省前庭機能異常調査研究班により診断基準が改定され,疑い例は,蝸牛症状が変動する「非定型例(蝸牛型)」と,めまいのみを反復する「非定型例(前庭型)」に分けられた。
・2017年には日本めまい平衡医学会により診断基準の改定が行われ,確実例の症状に,新たに検査所見が加えられ,症状のみのものは疑い例と分類された。確実例かつ難聴のある耳に造影MRIで内リンパ水腫を認めた場合には,確定診断例と分類された。

3 急性期の診断と治療
・メニエール病のめまい急性発作期には,聴力検査で「感音難聴」を認める。感音難聴は病初期では低音域に限局し,発作が終了すると,聴力は正常レベルに改善する。進行すると,難聴は中・高音域に及び,聴力は正常レベルまで戻らない。急性の聴力低下に対しては,ステロイドの投与が行われる。
・眼振検査では,発作時には水平性または水平回旋混合性眼振が観察される。
・患者を安静にして,めまい・嘔気・嘔吐を抑えるために7%重曹水の点滴,ジアゼパムやメトクロプラミド,ジフェンヒドラミンの内服を行う。

4 間欠期の診断と治療
・発作期から回復したら,保存的療法として生活指導および薬物治療を行い,メニエール病の発作予防に努める。メニエール病の発症には精神的・肉体的過労,睡眠不足が関与しているため,ストレス回避に努め,過労防止,睡眠不足を緩和し,有酸素運動などの適当な運動について生活指導を行う。
・薬物治療として利尿薬,抗めまい薬を用いる。浸透圧利尿薬であるイソソルビドはメニエール病に対する施設参加の二重盲検試験において,メシル酸ベタヒスチンの効果を上回っていることが報告されている。
・薬物治療が奏効しない場合には,「段階的治療」に進む(「メニエール病・遅発性内リンパ水腫診療ガイドライン2020年版」参照)。この治療のアルゴリズムは侵襲性に応じて治療法を選択するもので,中耳加圧治療,内リンパ囊開放術,選択的前庭機能破壊術の順で低侵襲から治療法が列挙されている。
・中耳加圧装置による中耳加圧治療は2020年4月より正式に保険収載されている。適正使用指針に従い在宅で使用することで,保険請求が可能となる。
・「メニエール病・遅発性内リンパ水腫診療ガイドライン2020年版」では,クリニカルクエスチョンとして抗めまい薬,利尿薬,抗ウイルス薬,中耳加圧治療,内リンパ囊開放術,選択的前庭機能破壊術の有効性について,推奨度をふまえて記載されている。

プレミアム会員向けコンテンツです(最新の記事のみ無料会員も閲覧可)
→ログインした状態で続きを読む

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top