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【識者の眼】「地域の未来と地域医療連携推進法人『日本海ヘルスケアネット(HCN)』」栗谷義樹

No.5049 (2021年01月30日発行) P.62

栗谷義樹 (山形県酒田市病院機構理事長)

登録日: 2021-01-20

最終更新日: 2021-01-20

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筆者の住む山形県庄内地方は県西部の日本海側に位置し、酒田市はその北部、南に鶴岡市、北は遊佐町を挟んで秋田県と隣接している。

海抜ゼロから立ち上がる鳥海山と南の月山を背景に、春5月頃には広大な庄内平野の水田に真っ青な空と山の緑を映して全体が水面に浮かび、一年で最も美しい季節となる。この頃になると春の山菜がそれこそ爆発的に一斉に産直に並び、日本海の魚とともに地酒を楽しめるので、酒仙にとっては殆ど極楽のような土地だ。

私はこの地の酒田市立病院(400床)に1988年10月に赴任したが、その5年後に県立日本海病院(520床)が開院した。その後、98年にいろいろな事情で市立病院の病院長に就任した。さらにその10年後、2008年に県立市立の両病院統合再編が行われ、新しく設立された地方独立行政法人、山形県酒田市病院機構の理事長に任命された。昨年4月から中期計画4期目に再任され、現在に及んでいる。本コラムは「識者の眼」というものだが、私に出来ることは足かけ22年間、公立病院の運営管理に関わってきた現場人間としての経験と今後の方向を述べることで、肩肘の張らない話で責を果たさせて頂きたいと考えている。

表題の「地域の未来と日本海HCN」であるが、地域医療連携推進法人設立は、病院再編統合後、数年して従来の地方病院の経営運営計画が近未来に立ち行かなくなり、限界を迎えると強く予感されたことが主な理由である。医療を巡る制度設計や診療報酬改定の方向などは、概ね予測を大きく逸れるものではなかったが、平成の30年間における国のグローバル世界での競争力低下、急激に積み上がる国の債務残高、生産年齢人口の減少、さらには過疎、高齢化が急速に進み、医療需要が縮小しつつある地方の現実は、従来のような単年度運営計画を立てることを年々困難なものにしている。新型コロナのパンデミックはこの対応に残された時間軸を圧倒的に前に押し出してきた出来事だ。本連載では、地域で新たに立ち上げた共同事業を掻い摘んで説明しながら当面の狙いを述べ、読者諸氏のご意見ご教示を頂けることを願っている。

栗谷義樹(山形県酒田市病院機構理事長)[地方公立病院]

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