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弱視[私の治療]

No.5041 (2020年12月05日発行) P.47

杉山能子 (金沢大学附属病院眼科)

登録日: 2020-12-03

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  • 出生直後の正常新生児の視力は0.02程度で,その後鮮明な像を両眼同時に中心窩に結像させて見ることにより,視機能が発達していく。弱視(amblyopia)は,視覚感受性期内に適切な視刺激を受けて見ることが妨げられて生じる。早期に発見し,視機能発達の感受性期内に治療・視能訓練を速やかに行うことにより視力が改善する。

    ▶診断のポイント

    初診時には必ず前眼部~眼底検査を行い,必要なら光干渉断層計(OCT)を用いて器質的眼疾患の除外を行う。脳病変なども除外する。乳幼児は年齢・発達状況に応じて検査の方法・正常値が変化し,年少児ほど視力の左右差に留意する必要がある。乳幼児の屈折評価には調節麻痺下での屈折検査が必須である。弱視は原因により4つに大別される。

    ①形態覚遮断弱視:先天眼瞼下垂などの疾患で瞳孔領に視刺激が入らない状態や,眼帯による遮閉などで両眼あるいは片眼の像が遮断されることによって起こる。

    ②斜視弱視:常に固視眼が決まっている恒常性斜視では,斜視眼からの視覚情報を抑制し弱視となる。交代視可能な恒常性斜視あるいは間欠性斜視であっても,その交代視に左右差があれば,斜視弱視となる可能性がある。

    ③不同視弱視:左右の屈折値に差がある屈折異常が原因で起こる片眼性弱視である。調節は両眼同じ分量機能するので,遠視性不同視弱視では遠視の弱いほうの眼は焦点が合い,遠視の強い眼は常に不鮮明な像を見ることとなり,不同視弱視となる。左右差のある乱視や近視,遠視・近視・乱視が合併した左右差のある屈折異常も原因となる。

    ④屈折異常弱視:両眼同程度の屈折異常が原因で起こる弱視である。ある程度以上の強い遠視が両眼に存在すると,児の調節機能のみで焦点を合わせて鮮明な像を中心窩に結像させることができないために,屈折異常弱視となる。両眼同程度の乱視,近視や遠視・近視・乱視が合併した両眼性の屈折異常も原因となる。強度近視の両眼性弱視では,網膜の器質性疾患を伴う場合は屈折異常弱視とは異なり難治性であるので,眼底検査,可能ならOCT検査により鑑別することが重要である。

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