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【識者の眼】「マイクロ飛沫感染対策としての『換気』を二酸化炭素濃度で見える化を」和田耕治

No.5037 (2020年11月07日発行) P.56

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2020-10-28

最終更新日: 2020-10-28

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「喋る時」「食べる時」に多く飛ぶ飛沫のうち比較的小さく空気中を浮遊するマイクロ飛沫に対しては適切な換気が必要である。既に冬を迎えようとしている中、換気を適切に行わなければ室内が寒くなってしまう。しかし、適切に換気が行われているか否かは感覚などではわからない。そこで、「換気の見える化」に空気中の二酸化炭素濃度を活用する提案が再び注目されている。これは、新型コロナウイルス流行の初期から日本産業衛生学会産業衛生技術部会新型コロナウイルス(COVID-19)対応検討チームにより示されている。

筆者も、このお勧めに従い二酸化炭素濃度を測定する機械を購入し、様々な場所で測定している。外とつながる場所であれば概ね問題ない濃度であるが、狭い会議室などでは、少し人が増えて密になっただけで二酸化炭素濃度が1000ppmを超えてくる。講演の際に紹介するため、最初から最後の方まで測定をしていると、始まる前は濃度が低くても1時間もすれば1000ppmを超えてくることもある。改めて、感覚だけでは換気の善し悪しはわからないと実感した。

良好な室内空気環境を維持するためには、1人当たり概ね30m3/h以上の換気量を確保することが必要である。室内の二酸化炭素濃度が1000ppm以下であれば、この必要換気量を確保できていると見なすことが可能であることが上記の検討チームにより示されている。研究者の間では1000ppmは理想だが、人が集まる場所であれば1500ppmを目安にしないとかなり厳しい、という意見も聞かれている。

この二酸化炭素濃度は飲酒を伴う飲食店などで、特に雑居ビルの奥の方にあるところで活用をしていただきたいと考えている。客への安心にもつながるであろう。ただし、既存の建物の構造では換気をしていても人が多くなると徐々に濃度が1500ppmを超えてくることもあるようだ。そうした場所での換気をどうするかは課題であるが、これを放置するわけにはいかない。

今後の問題は、二酸化炭素濃度を測定する機械が市場にどのくらいあるか、そして、測定する機械の精度管理である。価格は安価なものから高価なものまである。故に、消費者として判断することになるであろう。

【参考】

1)日本産業衛生学会産業衛生技術部会新型コロナウイルス(COVID-19)対応検討チーム. [http://jsoh-ohe.umin.jp/covid_simulator/covid_simulator.html]


COI:筆者は二酸化炭素を測定する機器に関連する企業などからの資金援助は一切受け取っていません。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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