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苦悩と癒し[2]─苦悩をかかえる患者の癒し[プライマリ・ケアの理論と実践(74)]

No.5030 (2020年09月19日発行) P.12

草場鉄周 (北海道家庭医療学センター理事長)

登録日: 2020-09-17

最終更新日: 2020-09-16

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SUMMARY
患者の苦悩に対応する際,身体面での確かな治療技能に加え,患者の苦悩を受け止め,病気が患者にとって持つ意味を理解し,患者の傍らに寄り添い,患者が希望を見出すための支援を行う精神面のアプローチが必要である。

KEYWORD
希望
プライマリ・ケア医は苦悩を抱える患者が生きる希望を見出すための支援を行うが,ただ生きたいという希望から,より良い未来への希望,さらには人生に新たな意味を見出す希望,そして今この瞬間への希望などが含まれる。


草場鉄周(北海道家庭医療学センター理事長)

PROFILE
1999年,京都大学医学部卒業。2003年に家庭医療学専門医研修を修了後,2008年に医療法人北海道家庭医療学センターを設立。公職は日本プライマリ・ケア連合学会理事長,北海道医療対策協議会委員など。

POLICY・座右の銘
人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。

1 ケース

74歳女性。1年前から腰部脊柱管狭窄症による下肢のしびれと痛みが様々な鎮痛薬による内服治療でも緩和されず,手術も難しい状況にある。一人暮らしで炊事洗濯,掃除などを行う際の疼痛のつらさを訴え,「生きていても仕方がない,早く夫の元に旅立ちたい」と涙を浮かべながら語り,その背景には同様の症状で周囲から孤立し苦しんだ義母と同じように生き続けることへの恐怖が影響していることがわかった。

診療に行き詰まりを感じていたあなたは整形外科から提供された診断に関する情報を再確認し,それから処方されてきた様々な鎮痛薬を1つ1つチェックした。一部の内服薬については用量が不十分だったことも判明し,今後再処方を検討することにした。また,最近数カ月の医療面接について振り返ると,診察後の患者が看護師に「最近,先生は忙しいようで,なかなか思いが伝えられていない」と愚痴をこぼしていることも耳にし,多忙な外来診療の中で早く診療を終わらせようと患者の話を遮る場面が増えていることを自覚した。そこで,比較的診療に余裕のある午後の外来で予約枠を広めにとるように計画した。

また,患者が苦悩を抱えながらも生き続けるために,失われた「生きることの希望=生きがい」をどのようにすれば取り戻すことができるのかと思いを巡らした。過去のトラウマ,現在の人間関係,趣味や生きがいなど,患者自身の人生や価値観に関わる質問を投げかけ,患者の人となりをより深く理解し,患者が希望を取り戻し,自己治癒力で癒しを得るプロセスを支援していこうと決意した。

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