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【識者の眼】「全身に影響が及ぶCOVID-19は敗血症そのもの」松嶋麻子

No.5028 (2020年09月05日発行) P.56

松嶋麻子 (名古屋市立大学大学院医学研究科先進急性期医療学教授)

登録日: 2020-08-27

最終更新日: 2020-08-27

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2020年夏、日本は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)が7月後半から再び増加し、第2波とも言われています。ただ、春とは異なり、緩やかな自粛生活の中で感染を防ぎながら新たな日常生活を送る「with corona」の模索が続いています。今回は前回(No.5012)に続き、COVID-19と敗血症をテーマに、COVID-19の疫学と重症化について述べます。

7月にJAMAに掲載されたレビューによると、COVID-19入院患者の平均年齢は47〜73歳で、74〜86%は50歳以上でした。COVID-19診断患者の重症度は、軽症81%、重症14%、重篤(呼吸不全、敗血症性ショック、多臓器不全)5%です。死亡率は年齢で大きく異なり、米国の報告では、5〜17歳は患者1000人あたり0.3人、85歳以上は患者1000人あたり304.9人。集中治療室へ入室した重症・重篤患者では40%に上るという報告もあります。

入院患者に発症した主な合併症は、肺炎75%(うち、急性呼吸窮迫症候群〔ARDS〕15%)、肝障害(肝逸脱酵素やビリルビン上昇)19%、心筋障害(トロポニン値上昇、心不全、不整脈、心筋炎)7〜17%、動静脈の血栓塞栓症10〜25%、腎障害9%、神経障害(意識レベル低下8%、脳血管障害3%)、敗血症性ショック6%でした。

入院患者の17〜35%は集中治療室で治療されていますが、主な入室理由は肺障害による低酸素血症であり、29〜91%は人工呼吸や体外式膜型人工肺(ECMO)の治療を受けていました。集中治療室に入院した患者では31〜59%に何らかの血栓塞栓症が発症したとの報告もあります。稀な合併症として、サイトカインストームやマクロファージ活性化症候群と呼ばれる重篤な病態も報告されています。

小児では無症状や軽症患者が多いと言われていますが、入院した小児患者の一部(7%未満)では、人工呼吸が必要な程、重症化する患者もいます。川崎病に類似した全身の炎症反応を示す小児患者も、少数ではあるものの(21歳未満の患者10万人あたり2人)欧州や北米で報告されています。

このように、一部の患者では激しい炎症反応が起こり、重症化することが分かってきましたが、その病態は未だ謎が多いのが現状です。SARS-CoV-2の直接的な影響か宿主の免疫反応かに関わらず、全身の臓器に影響が及ぶCOVID-19は「感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態」という敗血症そのものと言えるでしょう。その治療と予後の改善には、SARS-CoV-2に対するワクチンや抗ウイルス薬の開発とともに、COVID-19の多様な病態を解明し、病態に応じた敗血症治療の開発も求められます。

【参考文献】

▶Wiersinga WJ, et al:JAMA. 2020;324(8):782-93. 

松嶋麻子(名古屋市立大学大学院医学研究科先進急性期医療学教授)[敗血症の最新トピックス⑧]

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