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【識者の眼】「新しい生活様式に配慮した『かかりつけ医』との関わり方」小林利彦

No.5024 (2020年08月08日発行) P.63

小林利彦 (浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)

登録日: 2020-07-27

最終更新日: 2020-07-27

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国は、新型コロナウイルス感染症への日常対応として「新しい生活様式」の実践を訴えている。具体的には、基本的感染対策である「身体的距離の確保・マスクの着用・手洗い」の遵守とともに、日常の生活場面として「買い物」「娯楽、スポーツ等」「公共的交通機関の利用」「食事、イベント等への参加」における注意事項等を明記している。しかし、その中には「医療への関わり方」は記されていないように思う。その背景には、地域住民が新しい生活様式のもと自らが感染者にならないことで、医療機関に過度な業務負担をかけないことへの配慮があると考えるが、必要とされる医療を制限しようという意図はないはずである。

日本医師会は5月27日に「新しい生活様式」を支える四つの提言「“本人に適した生活習慣”の実践に向けて」を発表したが、その中でも、かかりつけ医の確保と国民一人ひとりが自らの健康状態に応じた運動、食事、禁煙等、適切な生活習慣を実行することの重要性を強調している。また、地域の感染状況等にかかわらず、受診が必要な場合にはICTなども活用し健康相談・指導等を受けるようにと助言している。最近の診療動向調査では、小児科や耳鼻咽喉科、整形外科などを中心に受診抑制の傾向が少なからず見受けられるが、健診・検診・予防接種の先延ばしが今後の疾病動向に影響を与えるのではないかと危惧されている。

地域医療の強みは「受診への容易なアクセス」にあると考える。新しい生活様式ではICT等を活用した空間的距離の制約解放を目指しているように思えるが、電話等再診や長期処方などを一時的に活用しながら、いざという時には直ぐに相談できる「かかりつけ医」を確保しておくことが、ウィズコロナ時代には必須な対応策となるはずである。実際、2020年4月現在、全国には病院が8260施設あるのに対して、一般診療所は10万2638施設(有床6483・無床9万6155)もあることを踏まえれば、地域の診療所を自身の健康相談窓口および基幹病院等へのアクセスポイントにしておくことの意義は高いと考える。

小林利彦(浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター特任教授)[地域医療]

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