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【識者の眼】「労働者に対する新型コロナウイルスのPCR等の検査についての危惧」和田耕治

No.5023 (2020年08月01日発行) P.57

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2020-07-16

最終更新日: 2020-07-16

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プロ野球などスポーツ選手に新型コロナウイルスのPCR検査を行って、陰性であることを確認してから試合に参加したり、海外に渡航する前に検査で陰性証明を求める国もあります。こうした検査拡大の動きが安易に企業にまで広がりそうなので、注意喚起のためにこれを書いています。

基本的には、新型コロナに関する検査を企業が従業員に対して行う場合には、労働者個人の自由意志に基づく必要があります(強制はできない)。また、検査の結果は労働者自身に帰属します。企業が検査費用を出したからといって本人の同意無くして検査結果を企業が取得することは適切ではありません。これに似た議論としては、かつてHIVやウイルス性肝炎の検査などでも同様の判断がされました。2017年から施行されている改正個人情報保護法では、こうした検査結果は「要配慮個人情報」とされています。

企業の感染対策として重要なのは、具合が悪い労働者には自宅待機や受診を勧めることです。受診したとしても、検査結果などは本人の同意がないと聞けません。普段からの信頼関係によるでしょう。以前からも、企業の中には具合の悪い労働者に陰性証明をもらってくるようにという安易な指示があり、本人も医療現場も混乱させました。陰性であったとしても、具合が悪ければ休む必要があります。陰性証明を労働者に求めないように企業は再確認してください。

また、接待を伴う飲食店のようなリスクの高い場所で働くと、新型コロナに感染している可能性(検査前確率)が高くなることがあります。こうした方たちがお客さんを安心させる意味で検査を定期的に行うというのは選択肢としてあがるでしょう。歌手がコンサートの前などに陰性であることを自ら確認しておきたい、場合によっては主催者に示したいという希望もあるようです。こうした目的の検査を全くしてはいけない訳ではないとは考えています。しかしながら、上記に関することについては留意する必要があります。そして、陰性であったとしても、採取した検体にはウイルスが無かったということの証明だけですので、陰性なら何をしても大丈夫というわけではありません。そのあたりは検査を実施する医師が丁寧に説明することが必要と考えています。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症][産業保健]

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