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【識者の眼】「今こそ医療と児童福祉の連携を」小橋孝介

No.5020 (2020年07月11日発行) P.60

小橋孝介 (松戸市立総合医療センター小児科副部長)

登録日: 2020-06-25

最終更新日: 2020-06-25

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地域では散発的なPCR検査陽性者の報告があるものの多くの社会活動は再開され、新型コロナウイルス感染症とともに生きる社会が動き始めた。このような中、保護者がPCR陽性で子どもが陰性となり、子どもの養育が一時的に困難となった事例への対応の具体的な整備が進んでいない。

厚生労働省は保護者が新型コロナウイルスに感染したことにより入院した場合等の対応について、4月10日1)、4月23日2)に各都道府県に事務連絡を発出した。この中でこのような濃厚接触者となる子どもの保護にあたっては、衛生部門と児童福祉部門が協働して対応を協議し準備を進めておく必要があるとしている。

全国の中でいち早く神奈川県は、県内の医療機関や児童福祉施設と協力して明確な受け入れ基準や体制を整えた3)。年齢毎に受け入れ先を決めており、2歳未満の乳幼児については医療機関が受け入れをすることとなっている。

神奈川県以外にも児童相談所の一時保護所などを、濃厚接触者となる子どもに確保した事を発表している都道府県は複数あるが、乳児の受け入れ先(通常一時保護所では乳児は受け入れできず、乳児院へ保護することが多い)など年齢毎の対応や、具体的な受け入れに際した感染管理のマニュアルやマスク、ガウン等の最低限の個人用防護具の確保については不明である。神奈川県のような例外を除き、多くの都道府県では「PCR陰性なので後は児童福祉の中で対応を」と丸投げとなっている現状がある。

濃厚接触となる子どもを保護する一時保護所等の感染管理やそれに関わる福祉職員への教育、個人用保護具の確保などについては、衛生部門との協力が必要不可欠である。また医療機関も、PCR陰性の場合でも社会的に必要な乳児の一時保護への対応等を都道府県の医療機関のネットワークの中できちんと取り決めておくべきだろう。

新型コロナウイルス感染症対策として保健所、医療機関は日々最前線で感染患者の対応にあたっているが、同時にその背後で起こっている、このような福祉的な問題にも医療が担う役割は少なからずあり、より主体的に関わっていかなければならない。「できない理由」を沢山挙げて、困難な状況に置かれている子どもや家族を見て見ぬふりをするのではなく、「どうやったらできるのか」を一人一人がもっと考える必要がある。

【文献】

1)[https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000622777.pdf]

2)[https://www.mhlw.go.jp/content/000624907.pdf]

3)[https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ga4/covid19/ms/hybrid_20200512_2.html]

小橋孝介(松戸市立総合医療センター小児科副部長)[新型コロナウイルス感染症][子ども虐待][子ども家庭福祉]

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