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【識者の眼】「真の費用対効果を考える(各論その2)〜効果とは?」三宅信昌

No.5017 (2020年06月20日発行) P.65

三宅信昌 (三宅整形外科医院院長、日本臨床整形外科学会参与)

登録日: 2020-06-03

最終更新日: 2020-06-03

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今回は費用対効果の「効果」についての解説を致します。世界には多くの疾患があり、ある疾患がどの程度その国の医療費の負担と国民の経済的負担になっているのかは疾病負担(global burden of disease:GBD)と称され、疾患別医療の重要性の比較ができます。世界保健機関(WHO)では環境や医療レベルの相違によって年代別の障害損失年数(years lost due to disability:YLD)を公表しています。それによると米国の第1位は精神疾患、第2位は筋骨格系疾患となっており、内分泌系、呼吸器系、消化器系、感染症や悪性腫瘍に比べて優位となっています。日本のデータでも疾患による欠勤、就職障害(転職や退職)など経済的損失の第1位は精神疾患、第2位は疼痛疾患と試算されています。すなわち、健康に長生きするために、国が力をいれるべき疾患の医療経済的順位と考えられます。

疾患ごとの臨床的数字では費用対効果の比較はできないため、共通の単位が必要です。これが質調整生存年(quality-adjusted life year:QALY)で、生きた年数とその時の生活の質という2つを合算して効果判定の対象としています。1QALYは完全に健康に生きた1年を示し、例えば寝たきりで1年生きた場合は0.1QALY、亡くなった場合は0QALYとなります。世界的なQALY計算指標としては、患者の生活の質を示すEQ-5D(Euro-QOL 5 dimension:日本語版あり)が各国の指標として半数以上の国で使用されています。縦軸にQALY数、横軸に生存年数の表を作成することによって、その面積が患者さんの生活の幸せ度合を示すことになり、その面積を比較することで疾患治療の真の効果を表します。

EQ-5Dをはじめとする患者主体評価はPRO(patient reported outcome)といわれ、今後の医療効果判定に重要な役割を示すことになります。すなわち、国民=患者が長生きするだけでなく、いかに幸せな人生を送れるかを効果判定指数とすることによって、真の費用対効果となり、国家の医療費予算編成討議においてもその指数は重要な因子となると思います。

三宅信昌(三宅整形外科医院院長、日本臨床整形外科学会参与)[診療報酬点数]

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