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【識者の眼】「外保連の人件費の考え方」岩中 督

No.5016 (2020年06月13日発行) P.69

岩中 督 (外科系学会社会保険委員会連合会長、埼玉県病院事業管理者)

登録日: 2020-05-20

最終更新日: 2020-05-20

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前々回(No.5007)、外保連手術試案の人件費は技術料×人員数×手術時間で計算すると述べ、前回(No.5012)はその技術料の単価となる技術度について詳述した。本稿では、人員と手術所要時間に関する外保連の人件費の考え方を述べる。

ほとんどの手術は、複数の外科医によって実施される。試案では、責任者になる外科医の技術度で個々の手術の難易度を決め、助手として協力する外科医の技術度は人数が増えるごとに1段階ずつ下げる約束になっている。たとえば胃癌に対する「胃悪性腫瘍手術・幽門側切除術(腹腔鏡下)」は、外保連手術試案9.2版では、試案IDはS91-0242100、技術度D、外科医数4名、手術時間6時間、協力看護師数2名のため、外科医数は、D群1名、助手3名はそれぞれC群、B群、A群となる。ゆえに、〔(9万1150円(D群)+5万5860円(C群)+2万4160円(B群)+6570円(A群))〕×6時間+看護師時給2930円×2名×6時間の合計金額110万1600円が、この手術の人件費になる。

これらの手術の外科医数と手術時間が実態に沿っているかどうかについては、およそ4年ごとに日本外科学会外科専門医制度修練施設および関連施設にお願いして、1〜2カ月分のすべてのKコード手術の外科医数、手術時間を実態調査している。2012年は約700施設から回答があり計23万症例の手術を、2016年も約700施設から15万症例の手術を集計し、それぞれ外保連試案2014、外保連試案2018の当該術式の人件費を補正し精緻化した。

外保連試案の人件費が調査の結果減額になると、厚生労働省は常にこの試案を参考にしているため、次の診療報酬改定で診療報酬点数も減額されることが多く、一部の外科医からご批判をいただくこともあるが、「手術診療報酬は科学的根拠に則って決められるべき」と考える外保連のスタンスを説明している。外科医師数を含めた時間当たりの人件費の相対値に手術時間数を加味して算出する「外保連手術指数」()が、DPC特定病院群の実績要件になっていることもあり、実態に即した外科医数と手術時間はきわめて重要な指標となる。

新型コロナ肺炎蔓延下で一部の手術を延期している異常な状況下であるが、今年度も秋口に外保連試案2022の策定のための実態調査を行う予定であり、外保連手術試案の果たす役割をご理解いただき、今回の調査にも多くの施設の好意的なご協力をお願いしたい。次稿では、手術診療報酬に占める診療材料の評価について述べる。

岩中 督(外科系学会社会保険委員会連合会長、埼玉県病院事業管理者)[外保連]

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