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【識者の眼】「総合診療医は住民のニーズで決まる」竹村洋典

No.5016 (2020年06月13日発行) P.57

竹村洋典 (東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科全人的医療開発学講座総合診療医学分野教授)

登録日: 2020-05-19

最終更新日: 2020-05-19

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新型コロナウイルスが感染拡大すると、感染症科の先生方の需要が増えるのはわかるが、医療機関や地域での総合診療医の需要も拡大しているように実感している。それは、総合診療医が、住民や地域のニーズを満たそうとすることによると思われる。ともすると分化度が高い専門診療科医師は、診療範囲を自分が専門とする診療に固執しがちだが、総合診療医は地域住民のニーズに応じて臨機応変に自身の診療範囲を変えていかなくてはならないと思っている。実際にできなくてもそのように思っている。米国の総合診療医(family physician)が、患者を目の前にして「私の専門はあなた」と、やや顔が赤くなりそうに言い切ってしまうのもその思いがあるからこそである。

その総合診療医が住民のニーズに合致するためには、国内外で5つの機能が必要と言われる。①包括的医療が提供できる、②必要があれば様々な専門診療科、コメディカル、行政等と連携できる、③医療者中心ではなく患者(または住民)中心的である、④身近にいる、⑤いつも継続的にケアしてくれる─の5つである。守備範囲が包括的で広いといっても、すべての診療ができることを目標としているわけではない。皮膚科医がよく診療している疾患、整形外科医がよく診療している疾患等、各々の専門診療科の医師がよく診療しているコモンな疾患のみ、でもそのすべてが診療できればいい。新型コロナウイルスについても、現在はコモンな病気になりつつある。連携については、患者をすべて自分で診るのではなく、必要に応じてコンサルトすることで、診療が効率的となり、また患者も安心できるようになる。実際には、総合診療医にかかる患者の問題の9割以上はコンサルトしなくても診療できるといわれる。一方、退院時カンファや在宅医療をする際に様々な医療施設の医師、コメディカル、そして福祉関連の従事者と連携することの必要性が認識される。

上記によるならば、(大規模、中小規模など)病院とか診療所等の活動する施設や、都会や医師不足地域などの活動の立地では総合診療医は規定されない。そして逆に言うと、これらの5つの機能が具備されている医師は、総合診療機能があるともいえよう。総合診療医を厳格な定義で縛ってしまうと、かえって、住民のニーズを満たせなくなるかもしれない。

竹村洋典(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科全人的医療開発学講座総合診療医学分野教授)[総合診療②]

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