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【識者の眼】「日本では親の責任? 〜世界と日本の性教育〜」柴田綾子

No.5016 (2020年06月13日発行) P.62

柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科副医長)

登録日: 2020-05-18

最終更新日: 2020-05-18

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読者の皆さまは、ご家庭で子供に性行為についてどうやって教えていますか?日本の「性的同意年齢」は13歳であり、13歳以上は性行為に関する判断能力があるとみなされます(刑法)。日本では「性教育は家庭が行うものであり、学校での教育は補完的なものだ」という考え方があり(文部科学省専門部会での意見より)、性行為に関する情報は義務教育の中で十分に教えられていません。そのため、各家庭で親から子供へ正しい性行為について伝える必要があります。

中学校の学習要項には「性交」という言葉は入っておらず、東京都の調査でも91%の中学校は「避妊法」や「人工妊娠中絶」について説明していません(性教育の手引、2019年)。その一方で、日本では年間15歳以下の女の子700人以上が人工妊娠中絶術を受けています(厚生労働省、2017年)。少なくとも中学生になったら、自分と相手の体を守るための避妊法について、正しい知識を伝える必要があります(国によっては、もっと早くから性行為や避妊について説明しているところもあります)。

学校での性教育が少ない日本では、各家庭で性や避妊について教える必要がありますが、どのタイミングでどのような内容を伝えたらいいのでしょうか?そのヒントとして、今回はユネスコの国際セクシュアリティ教育ガイダンス(International technical guidance on sexuality education,2018)について紹介します。このガイダンスのコンセプト7(性行為の章)では以下のように説明されています。

・5〜8歳へ:適切な愛情表現について説明

 人々はタッチ、ハグ、キスなどで愛情を表現するが、自分の体の「大切な部分(プライベートゾーンなど)」へ他人がむやみに触ることはダメなことを説明する。

・9〜12歳へ:性的な刺激への反応を説明

 男性・女性において性的な刺激への反応(身体的・心理的)やマスターベーションについて説明する。

・9〜12歳へ:性行為への選択権を説明

 性行為をすることも、しないことも選択できること、性行為をしないことは性感染症や妊娠しないための安全な選択肢であることを説明する。

・12〜15歳へ:性行為に伴うリスクを減らす方法を説明

 コンドームは性感染症のリスクを減らすこと、その他の避妊法についても説明する。

いかがでしたでしょうか? 「性教育」と聞くと難しく響くかもしれませんが、「自分や相手の体を大切にする方法」と考えると、分かりやすいかもしれません。ユネスコの国際セクシュアリティ教育ガイダンスは、原文はHPから無料でダウンロード可能(https://www.unfpa.org/publications/international-technical-guidance-sexuality-education)で、日本語翻訳本は販売されています。関心を持った方はぜひご家庭や診療で活用して頂けたらと思います。

柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科副医長)[性教育]

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