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【識者の眼】「生産性向上は仕組みの改革」神野正博

No.5011 (2020年05月09日発行) P.34

神野正博 (社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)

登録日: 2020-05-09

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前々回(No.5000)で筆者は、労働生産性×労働時間=業績という式のもとで、病院の持続可能な業績確保のためには「生産性向上なくして、時短なし!」と主張した。

今回は、その生産性向上のための手段を考えてみたい。生産性向上はこれまで通りの仕事をただ馬車馬のようにスピードを上げるだけだとするならば、いずれ現場は疲弊する。生産性向上には仕組みの改革が必要なのだ。

まずタスク・シフト/シェアだ。働き方改革の1丁目1番地として、大きな期待が寄せられる。厚生労働省も「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」なる会で、看護師や特定行為研修修了看護師、臨床工学士、臨床検査技師、臨床放射線技師のほか救急救命士などの活用を議論する。前提として、各職種で譲ることができない本来業務(core mission)をきちんと規定されているかが重要であろう。その上で何を移譲し、分かち合うのかを考えるべきだろう。

また、cascadeするといった概念が必要だ。cascadeとは、小さな滝が連なった状況である。仕事をcascadeするということは、例えば、医師の本来業務から離れた仕事を看護師に、看護師の仕事をコメディカルに、コメディカルの仕事を事務職に、事務職の仕事を外注業者やICTに、というように流していく必要がある。当然、どこかの職種で仕事をcascadeせずに抱え込んでしまうとダムができ、いずれ業務を持ち切れず決壊してしまうのだ。

生産性向上の道具として、「効率化」と名前を変えれば、これまでも数々の仕組みが利用されてきた。TQM(あるいはTQC)活動と呼ばれる品質管理活動や、多職種が検討し無駄を削ぎ落した治療の工程表を作成するクリティカルパスの導入も然りであろう。加えて、これからの時代では、ICTやAIの導入・活用、さらにはRPA(ロボティックプロセスオートメーション)による定型業務の自動化、様々なロボット機器の導入などがあるだろう。

すでに生産性向上活動は、人材不足とコスト削減圧力に耐える日本の製造業などで急速に進められてきた。医療業界もこういった先達の仕組みを積極的に学ぶべきだろう。

神野正博(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)[働き方改革に思う②]

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