No.5006 (2020年04月04日発行) P.61
黒木春郎 (外房こどもクリニック理事長、日本遠隔医療学会オンライン診療分科会会長)
登録日: 2020-03-25
最終更新日: 2020-03-25
この原稿を執筆中の現在(3月23日)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の推移は見通しがつかない。国内的にも世界的にも予断は許されない。
一方では、COVID-19陽性者とその関連医療施設、立ち寄り先に至るまでの「風評被害」ともいえる事態は後を絶たない。また、感染予防としての対応がどこまで科学的に裏付けられるか疑問な場合も見受けられる。疾患が本来の医学的意味を超えてしまっている。米国の作家、スーザン・ソンタグは『隠喩としての病』と題して、疾患が社会の中で「隠喩」として扱われることを論考した。癌、エイズ、かつてのハンセン病の扱いなどがそれである。COVID-19もそのように社会の中で流通している面がある。3月22日のThe Japan Timesで“Why what doesn’t kill us makes us panic”とのOpinionが掲載された。疾患が本来の医学的意味を離れていく様子が論考されている。
2月27日には私のクリニックのある千葉県いすみ市でCOVID-19が心配な方へのオンライン医療相談が開始された。費用全額を自治体が負担する。実際の医療相談の必要性とともに、医師による医療相談が行われていることが住民の安心につながるとの声が寄せられている。大変重要なことだと思う。
現在のCOVID-19は非常時である。非対面診療の優位性が高まっている。3月11日の厚労省検討会では「比較考量」により、オンライン診療の活用を考えることが言及された。3月19日には厚労省よりこの緊急時におけるオンライン診療の活用に関しての事務連絡が発出された(https://www.mhlw.go.jp/content/000611278.pdf)。受診控えの慢性疾患患者さんへの対応、軽症COVID-19への対応などが記されている。オンライン診療の拡大へ踏み込んだとも読める内容である。
オンライン診療に関しては、すべてがそれで解決するかのような報道がマスコミで流される。当然ながらオンライン診療にはその利点も限界もある。
未知で困難な状況下でこそ、医療の可能性が広がる。医療が社会の要請に真に応えるならば、「隠喩としての病」は解消される。この非常時には、オンライン診療のさらなる可能性を追求したい。
黒木春郎(外房こどもクリニック理事長、日本遠隔医療学会オンライン診療分科会会長)[新型コロナウイルス感染症]