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脊椎関節炎(強直性脊椎炎・乾癬性関節炎)[私の治療]

No.5004 (2020年03月21日発行) P.47

小林茂人 (順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院内科特任教授)

登録日: 2020-03-20

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  • Ⅰ.強直性脊椎炎(成人)

    仙腸関節・脊椎および末梢関節(下肢の大関節,非対称性)に炎症をきたす。患者の8割以上はHLA-B27を保有する。

    ▶診断のポイント

    発症年齢が45歳未満,炎症性腰背部痛,CRPの上昇,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)が腰背部痛に有効,踵の付着部炎,前部ぶどう膜炎の既往,家族歴などが診断のポイントになる。特に,鑑別・除外診断が重要である。assessment of spondylo arthritis international society(ASAS)などの診断アルゴリズムが有用である。分類基準のチェックリストのみで診断してはならない。掌蹠膿疱症性骨関節炎(pustulotic arthro-osteitis:PAO)やSAPHO症候群,びまん性特発性骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis:DISH),線維筋痛症の誤診に注意する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    活動性,合併症,既往歴,疼痛の程度,炎症所見,職業など総合的な把握が重要である。疾患の概要を説明し,患者の理解・合意を得て治療を行う。自然経過は様々である。初期には約10%は自然に寛解する。靱帯骨棘の進行は個々によって様々であり,特に女性では遅いことなどが知られている。

    薬物療法の基礎薬はNSAIDsである。体軸性病変にはメトトレキサート(MTX)の効果は証明されていない。末梢関節炎にはサラゾスルファピリジンが選択される。効果がない際にはtumor necrosis factor(TNF)阻害薬,インターロイキン(interleukin:IL)-17阻害薬が選択される。生物学的製剤の選択はbath ankylosing spondylitis disease activity index(BASDAI)≧4,またはankylosing spondylitis disease activity score(ASDAS)≧2.1かつリウマチ専門医の評価にて,生物学的製剤の治療が決定される。IL-17阻害薬は併存する炎症性腸疾患を悪化させるため,特に注意する。効果判定は少なくとも12週後にΔBASDAI≧2またはΔASDAS≧1.1の改善が認められれば治療薬を継続する。

    運動療法は,薬物療法と同等かそれ以上に重要である。可動域保持,強直防止,機能改善に重要である。自分で毎日行うことが重要である。

    手術治療は,股関節の人工関節置換術が,若年者であっても考慮される。

    日常生活での注意点は,喫煙者は禁煙,運動療法の励行が重要である。進行した症例では,脊椎は軽微な外傷にて骨折しやすいので,進行症例には衝突や転倒の危険性がある格闘技やコンタクトスポーツは避けるべきである。

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