株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

13価,23価の肺炎球菌ワクチンの接種回数が違う理由は?

No.5004 (2020年03月21日発行) P.52

西 順一郎 (鹿児島大学大学院医歯学総合研究科微生物学分野教授)

登録日: 2020-03-19

最終更新日: 2020-10-09

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

23価肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®)は5年ごとの接種が勧められていますが,なぜ13価肺炎球菌ワクチン(プレベナー13®)は1回のみの接種でよいのでしょうか。ご教示下さい。(山口県 B)


【回答】

【特異的メモリーB細胞による免疫記憶が残るか否か】

23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)には,23種類の莢膜多糖体が単独で含まれています。多糖体はT細胞非依存性抗原であり,B細胞だけを刺激し,多糖体抗体が産生されます1)。T細胞が関与せず莢膜多糖体に特異的なメモリーB細胞が誘導されないため,抗体は5~10年後には接種前のレベルに緩やかに減衰し,免疫記憶が残りません。したがって,5年後の再接種が推奨されています2)

一方,13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)は,13種類の莢膜多糖体にそれぞれキャリア蛋白質として無毒性変異ジフテリア毒素(CRM197)を結合しています。そのため,抗原提示機能を持つB細胞でプロセッシングを受けた多糖体の一部が蛋白質とともにMHC class Ⅱ分子を介してT細胞に抗原提示されます1)3)。抗原提示を受けたヘルパーT細胞の働きで,B細胞による多糖体抗体の産生が多糖体単独抗原の場合よりも高まります。また特異的メモリーB細胞も形成されるため,再び特異的莢膜多糖体抗原の曝露を受けると,速やかに抗体産生が開始されます。実際に,接種5年後の抗体価は,接種前よりも高いレベルで維持されていることが報告されています4)。以上の理由から,成人におけるPCV13の接種回数は現時点では1回でよく,再接種は不要とされています。

ただし,成人にPCV13が接種され始めてまだ数年であり,さらに何年間ぐらい免疫が持続するかについては不明であるため,今後も1回接種でよいのか検討が必要と考えます。侵襲性肺炎球菌感染症のリスクが高い無脾症患者では,再接種を想定して初回接種から5年後に抗体測定を勧める研究成果も報告されています5)

【文献】

1) Pollard AJ, et al:Nat Rev Immunol. 2009;9(3): 213-20.

2) 大石和徳, 他:感染症誌. 2017;91(4):543-52.

3) Lai Z, et al:Vaccine. 2009;27(24):3137-44.

4) Frenck RW Jr, et al:Vaccine. 2016;34(30): 3454-62.

5) Papadatou I, et al:Ann Hematol. 2019;98(3): 775-9.

【回答者】

西 順一郎 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科微生物学分野教授

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top