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【識者の眼】「HPVワクチン接種を一刻も早く再開しよう」垣添忠生

No.5004 (2020年03月21日発行) P.61

垣添忠生 (日本対がん協会会長)

登録日: 2020-03-19

最終更新日: 2020-03-17

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子宮頸がんはヒトパピローマウイルス(HPV)の持続性感染で発症する。HPVは100種類以上あるが、発がん性が強い16、18型などに有効なワクチンが開発・販売されている。すべての医療行為には副反応が伴う。ワクチンも例外ではない。それでもワクチンが重視されるのは、副反応をはるかに凌ぐ健康上の利益を多くの人にもたらすからである。

日本では厚生労働省が2010年11月、小学6年から高校1年の女性を対象として公費助成でHPVワクチンを接種する緊急促進事業を始めた。接種率は全国で70%に達した。13年4月には予防接種法に基づく定期接種が開始された。ところが、その2カ月後の6月、厚生労働省はHPVワクチンの「積極的な接種勧奨の一時差し控え」という政策決定を下した。接種者の一部に全身痛、歩行困難、視力低下などが認められたからである。その結果、全国のHPVワクチン接種率は1%以下に激減した。その状態がもう6年以上続いている。

「ワクチン接種後に健康障害が発生した」ことと、「ワクチンを接種したために健康に問題が生じた」ことは、よく似た表現だが別の事象だ。前者は前後関係、後者は因果関係を指す。

世界保健機関(WHO)は専門委員会による調査に基づいてHPVワクチンに関する安全声明を2回発表し、特に15年の声明では日本の状況に強い懸念を表明している。WHOの声明もあり、先進国のHPVワクチンの接種率は非常に高く、欧州の多くの国で70〜90%に達する。先進国の多くで子宮頸がんは根絶へ向かうだろう。しかし、日本だけは、このままでは毎年1万人以上の女性が子宮頸がんになり、3000人近くが亡くなる状況が続いてしまう。子宮頸がんになる人は20代後半から増えて30代後半でピークを迎える。小さな子どもを残して若い女性が亡くなることも多く、「マザー・キラー」とも呼ばれる。

これは、避けられる悲劇である。厚生労働省は被害者団体と早く和解し、健康障害が生じた人にはできる限り手を差し伸べつつも、国民にHPVワクチンの意義と問題点を冷静に説明すべきだ。一刻も早くワクチン接種を再開することが肝要である。

垣添忠生(日本対がん協会会長)[HPVワクチン]

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