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【識者の眼】「感染症は海外から来る─あらかじめ予防接種を」中山久仁子

No.5000 (2020年02月22日発行) P.44

中山久仁子 (マイファミリークリニック蒲郡院長)

登録日: 2020-02-21

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世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルス感染症について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)を宣言し、日本でも「指定感染症」となった。今、2009年に流行した新型インフルエンザを思い出す方も多いと思う。当時、「ブタインフルエンザ」「パンデミックインフルエンザ2009」とも呼ばれ、感染初期にメキシコで死亡率が高いと報道された。その後、PHEIC、そしてフェーズ6が宣言された。2009〜2010年の流行時で、わが国で2000万人が罹患したとされている。

その後、その新型インフルエンザは、2011年に「季節性インフルエンザ」へ移行し、A(H1N1)pdm09型と呼ばれ、毎年冬季に流行している。今季流行しているインフルエンザAは、このA(H1N1)pdm09型が主流である。毎年、季節性インフルエンザの感染者数は国内で推定約1000万人、2018年にはインフルエンザで約3000人が亡くなっている。インフルエンザ感染の6割はワクチンで防ぐことができ、死亡に至るリスクを6〜7割低下させることができるが、残念ながらワクチンの接種率は高くない。

感染症は国境に関係なく海外から来る。そのことは、今回の新型コロナウイルス感染症を経験して、多くの人が実感したと思う。今年は、東京五輪・パラリンピックのため、多くの人が海外から日本に来る。海外からの感染症の持ち込みは必至であろう。競技は東京を中心とした関東地域、北海道と、サッカーは他の地域でも行われる。そして、大会の前後には全国各地に選手団がキャンプを行ったり、ホストタウンとして選手や関係者と交流を行う自治体が多数ある。

一人が何人に感染させるかという指標の基本再生産数(R0)は、新型コロナウイルスは現時点(2月3日)では1.4〜2.5と推測されているが、麻しん(はしか)は12〜18、風しんは5〜7と高い。麻しん風しんはワクチンで予防できる。まず地域の小児定期接種率を1期、2期ともに95%以上に上げておく。次に今年度から始まった1962年から1979年生まれの男性対象の「風しん抗体検査・風しん第5期定期接種」の受診率を増やすこと。またそれ以外の年齢も、過去に罹患歴が明らかでない場合は、MR(麻しん風しん混合)ワクチンの接種が2回終わっていることを確認しておくことが肝要である。

感染症は新型コロナウイルスのように海外から来る。ワクチンで防げる疾患(vaccine preventable diseases)、特に感染力の高い麻しんと風しんはあらかじめ予防しておきたい。

中山久仁子(マイファミリークリニック蒲郡院長)[東京五輪・パラリンピック]

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