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【識者の眼】「HPVワクチン接種後の慢性疼痛にどう対応すべきか」奥山伸彦

No.5000 (2020年02月22日発行) P.43

奥山伸彦 (JR東京総合病院顧問)

登録日: 2020-02-21

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子宮頸癌がHPV(ヒトパピローマウイルス)の子宮頸部粘膜への感染に起因することが判明し、それを防ぐために、初交年齢以前の小学6年から高校1年女子を対象に2価のサーバリックスが承認・販売されたのは、欧州、豪州に遅れること2年の2009年であった。さらに2011年、4価のガーダシルも承認・発売され、対象年齢の女子の70%以上が接種する状況となり、2013年には定期接種化された。しかし、接種開始以後、ワクチンとの因果関係を否定できない持続的な疼痛が特異的に発生したとして、2013年6月厚生労働省は、その副反応がより明らかになり国民に適切な情報提供ができるまで、積極的な接種勧奨の一時差し控えを決定した。その結果、接種率は1%以下に激減し、積極的勧奨は6年以上経過しても再開されていないのが現状である。

この間、副反応被害者に対しては、日本医師会・日本医学会や厚労省が診療の手引きや協力医療機関を用意して診療体制を整備し、医療費・医療手当、年金など補償を実施している。一方、医学的には、副反応は機能性身体症状であると説明され、接種が機能性身体症状の発生頻度を上げる有意性が疫学調査で否定され、また、ワクチンのHPV感染や前癌状態の予防効果が、海外だけでなく国内でも証明されつつある。

それなのに、なぜ接種率が上昇しないのか。理由は、積極的勧奨が再開されない、マスメディアや教育機関が十分情報を提供しない、だけではなく、かかりつけ医が接種を勧めて良いか躊躇している姿が見え隠れする。聞きなれない機能性身体症状という疾患概念の説明だけでは、自分が責任を持って診療に関与できないという、医師の不安と責任感を感じる。

私は小児リウマチを専門とし、これまでいろいろな小児の慢性疼痛を診療してきた。このコラムが、皆さんがこの疾患をどう子どもたちや家族に説明し、新たに副反応が発生した際にどう対応すべきかを考える一助になれば幸いである。

奥山伸彦(JR東京総合病院顧問)[小児科][HPVワクチン]

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