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【識者の眼】「土壌作りから始める『人生会議』」馬見塚統子

No.5000 (2020年02月22日発行) P.12

馬見塚統子 (社会医療法人財団大和会東大和市高齢者ほっと支援センターなんがい管理者・社会福祉士)

登録日: 2020-02-25

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昨年11月、厚生労働省が「人生会議」の周知・啓発のために作成したポスターに批判が上がったために公開1日で取り下げることになりました。批判の内容としては「死を茶化している」「恐怖心をあおっている」というものだったようですが、その後今度はSNSなどに批判に対する疑問の声が上がり、「関心がない人にインパクトを与えるためのものだったのでは」「何が問題なのかわからない」「厚労省もそのまま続けた方が良かったのでは」という波紋が広がったそうです。私は比較的若い患者さんを取り上げていたことに意外性を感じましたが、取り下げるよりも厚労省の担当の方が企画の意図や狙いを説明し、その上でいろいろな意見の交換があると良かったのではないかと思いました。

一般の方たちは医療についてどのような情報やイメージを持っているでしょうか。普通に生活している上では「診療の内容」も「病院の仕組みや機能分化」も「延命治療」についても詳しく知る機会はないため、一番の情報源はテレビや口コミ、新聞、雑誌、インターネット等です。私たちソーシャルワーカーは患者さんと話をする時に、医療と介護の仕組みや利用の方法について患者さんや高齢者の方にわかりやすく伝えるように工夫しますが、本当に説明が難しいです。

テレビで放映されるものの内容は、一般的には大衆に理解してもらう、受け入れられるために「マイルド」で「わかりやすい」、もしくは視聴率を意識した「奇跡のような〇〇」「神の手を持つドクター!」というような極端なインパクトを与えるものになっています。一般の方が持っている医療や病院のイメージは現実とはかけ離れていたり、てんでバラバラであったり、メディアに扱われた加工されたものになっています。もっと現場で働いている医療スタッフの生の声や情報が一般の方に届くように、できれば講演会のような一方通行ではなく、双方向なコミュニケーションや対話が地域で行われることが重要です。一般の方がまず自分の住んでいる地域の医療を知り、自分の療養について考え始め、その先に「人生会議」についての話し合いがあるのが理想です。

馬見塚統子(社会医療法人財団大和会東大和市高齢者ほっと支援センターなんがい管理者・社会福祉士)[人生会議]

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