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【識者の眼】「働き方改革時代の医療機関での産業保健のあり方について3つの提言」和田耕治

No.5000 (2020年02月22日発行) P.30

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2020-02-23

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多くの医療機関では働きやすい職場を作る、また職員の健康を守る取り組みが既に行われています。しかし、一部の医療機関では、職員が健康を害した事案が時々報道されています。取り組みが不十分であると今まで以上に医療機関が非難される時代になっています。

病院の経営も人口構造の変化などに伴い、難しくなっています。医療機関によっては病床機能の調整、それに伴う医療従事者の業務内容の変化も始まっています。タスクシフティングも叫ばれていますが、シフトされた職種は業務が増加します。これまで以上に職員間での「対話」が必要となります。「対話」は容易ではないことも多く、時に感情的な反応も見られます。時間もかかります。そうした場を冷静に見つめ、丁寧にフォローができる人が医療機関には必要です。そこで、産業医や産業保健職の役割がこれまで以上に重要になります。

こうした時代において、医療機関での産業保健活動の推進には次の3つが必要と考えています。

1. 産業医の複数専任

医療機関には様々な健康リスクがあるため、それぞれの専門の医師を交えることが効率的です。産業医を経験することは、将来管理者になるために必要な知識を多く修得するため、幹部候補の方などの経験の場としても使えます。

2. 外部の産業医の活用

衛生委員会を含めて働きやすくするための対話をしたり、医療機関の問題点を指摘するためには、産業医としてのある程度の経験が必要です。外部の産業医を非常勤として雇用することは選択肢として挙げられます。面談などもお願いできるなら内部の産業医には話しにくいことも話せるチャネルとなります。

3. 産業看護職の選任

規模にもよりますが、産業看護職を1名専任で配置し、産業医の業務の調整や日々の面談などをしていただくと良いでしょう。コストは多少かかりますが、それ以上のパフォーマンスを上げている事例が最近増加しています。

【文献】

▶ 和田耕治, 編:医療機関における産業保健活動ハンドブック. 産業医学振興財団, 2019.

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[働き方改革]

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