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【識者の眼】「イノベーション推進と薬剤費コントロールを実現する薬価制度の議論が重要」坂巻弘之

No.5000 (2020年02月22日発行) P.40

坂巻弘之 (神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)

登録日: 2020-02-22

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わが国の国民医療費(概算医療費ベース)は、2017年度42.2兆円と推計されている。一方、薬剤費については、出来高払いベースで9.37兆円とされ、医療費に占める割合は約22%である。薬剤費割合について経済協力開発機構(OECD)データを用いて国際比較を試みると、各国の医療費の定義や承認されている医薬品の種類や価格の違いなどに留意する必要があるが、日本の薬剤費割合は先進国の中でもかなり高い。また、薬剤費を除く「医療費本体」に比べて、薬剤費伸び率が高いこともわが国の特徴と言える。

2015年度に高額なC型肝炎治療薬が発売になり、同年の薬剤費割合を大きく押し上げたが、その後、同薬効群がピークアウトし、さらにARB、スタチンなどの大型生活習慣病治療薬のジェネリックが上市されたことなどから、その後薬剤費は減少した。これにより、一部には、薬剤費が減少局面に転換したとする意見もみられる。

さらに高額で問題となったオプジーボ(一般名:ニボルマブ)が発売当初に比べ、4分の1以下まで引き下げられたことにより(20mgバイアル2014年9月15万200円→2019年8月3万5407円)、現行薬価制度により将来的な薬剤費に対する楽観的な見方がされることもある。しかしながら、より高額なバイオ医薬品や再生医療等製品の保険収載も予想されることから、今後の薬剤費については予断を許さない。

薬価制度は、企業にとっては新薬開発のインセンティブの大きな要素でもあり、単純な価格引き下げ政策は、わが国における新薬アクセス阻害につながる可能性もある。薬価制度改革において「国民皆保険の持続性とイノベーションの推進」の両立が謳われている。わが国において薬剤費コントロールは重要な政策課題であるが、イノベーションを推進しつつ薬剤費コントロールを実現する薬価制度のあり方の議論が重要である。

坂巻弘之(神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)[薬価]

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