株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

膀胱尿管逆流[私の治療]

No.4998 (2020年02月08日発行) P.41

佐藤裕之 (都立小児総合医療センター泌尿器科・臓器移植科医長)

登録日: 2020-02-10

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 膀胱尿管逆流(vesicoureteral reflux:VUR)は,膀胱尿管接合部の先天性構造異常に伴う原発性と,尿道・膀胱機能異常などで生じる二次性のものが存在する。尿路感染がコントロールできない場合,手術的治療を考慮すべきである。

    ▶診断のポイント

    排尿時膀胱造影を行い,国際分類による逆流症のGradeを確認する。その際に,尿道異常や排尿機能異常を認めないことを併せて確認し,二次性のものを除外する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    多くの症例が尿路感染を契機に診断されるため,1歳未満の乳児ではVURの程度にかかわらず予防的抗菌療法を行い,自然改善を期待する。1歳以降では軽度VURは予防的抗菌療法,もしくはそのまま経過観察を行い,Ⅲ度以上の高度VURでは予防的抗菌療法を行う。①予防的抗菌療法を行っても尿路感染を起こす場合,が手術の絶対適応であり,②Grade ⅤVUR,③腎機能低下例(発見時・観察期間中),④予防的抗菌療法対象年齢以上の尿路感染症例,予防的抗菌療法を継続しても改善が認められない例,⑤尿路感染を起こしやすい下部尿路機能異常を伴う高度VUR症例,であるが,近年は,⑥耐性菌による尿路感染(urinary tract infection:UTI)を起こした症例も手術適応と考え,手術を行っている。

    予防的抗菌療法の基本はスルファメトキサゾール/トリメトプリム(ST)合剤であり,トリメトプリム1~3mg/kg 1回投与を行っている。セフェム系,ペニシリン系の抗菌薬も使用される。セフェム系では通常量の1/6~1/3量,ペニシリン系では1/3量を用いている。

    5歳以上のVUR患児で尿失禁・頻尿などの下部尿路機能異常とともに便秘・便失禁などの腹部腸管異常所見を伴う場合,bladder bowel dysfunction(BBD)として扱い,下部尿路機能異常に対する治療とともに排便管理も行う。

    手術治療は開放手術を基本として,膀胱容量が250mL以上(4歳相当)ある場合,気膀胱下手術も考慮している。Grade Ⅱ~ⅢのVURに関してはデフラックス®注入療法も考慮される。開放手術術式としてはPolitano-Leadbetter法,Cohen法,Lich-Gregoir法があり(図),膀胱・尿管の状態,膀胱機能により使いわけることも考慮される。

    残り1,130文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top